市民球団設立準備室の新球団構想では、70社のサポート企業が個別に70人の選手と契約を交わし、球団にレンタルするというスキームとなってます。ここで、どのサポート企業にどの選手を割り当てるかというのは結構やっかいな問題です。
まず、サポート企業は、どういう基準で選手を選びたいと考えるでしょうか?もちろん、年俸の安い割に人気のある選手というのがよいのでしょうが、もう少し客観的に考えると、「選手の年俸+経費が負担可能な範囲におさまっていること」が第一で、次に「できれば前年度にサポートした選手を引き続きサポートしたい」と思うようになるでしょう。
ここで、サポート企業にとって、個々の選手の年俸には次に示すような大きなリスク要因が含まれているということを考慮しなければいけません。
・年俸は過去の実績と期待度で決まるが、怪我などで1年を棒に振ったり、逆に思わぬ活躍をしたりということで、年俸の高低と実際の活躍度が直結するとは限らない。
・年俸にインセンティブ契約が含まれる場合、シーズンが終了しなければ支払金額が確定しない。
また、サポート企業が球団から受け取るレンタル料は球団収支に見合った額であり最悪の場合はゼロになるというリスクもあります(逆にインセンティブと考えることもできますが。。。)。
ここで、サポート企業が5000万までは負担できるといった場合、選手のインセンティブ契約と球団のレンタル料という2つの変動要因をどうとらえるかは企業によって異なるでしょう。つまり、とりあえず5000万といったが、多少の変動は受け止めるという企業と5000万で予算を組んだからそれ以上は一切出せないという企業では事情が違うということです。
ところで、選手の年俸を決めるのは誰でしょうか?サポート企業がプロ野球選手の査定を適切にできるとは思えませんので、球団が決めるということになるでしょう。年俸交渉は球団と選手、契約を結ぶのは選手とサポート企業。ここにトラブルの要因が潜んでいそうです。例えば選手契約でインセンティブをつけるかどうかの判断にサポート企業は関われないということになります。しかし、前述の理由によって、インセンティブの有無はサポート企業にとって大きな問題です。じゃあ、年俸交渉の席にサポート企業が同席するのでしょうか?その場合は、年俸交渉の前にサポート企業に対する選手の割当が決まっている必要があります。しかし、サポート企業が支援する選手を決める判断基準の第一は年俸なのですから、その年俸が決まる前に選手の割当を行うのは難しいでしょう。また年俸を決める判断基準として、活躍度よりサポート企業の資金力に左右されるということになると不公平感がでてしまいます。
一方で、年俸の確定した70選手を70企業に割り当てる場合、想定以上の負担を強いられたと感じる企業がでてきたり、もっと負担していい選手をサポートしたかったのにと不満を漏らす企業がでてくる可能性もあります。
またサポート企業は選手を広告塔に使うわけですから、できれば毎年同じ選手をサポートしたいと思うでしょう。しかし、これをルール化すると、高額年俸の選手がFA、引退等でチームを去った場合、その選手をサポートしていた企業(つまり高額の負担をしていた企業)が次年度には有力選手をサポートできないということになってしまいます。1対1のトレードなら来た選手をサポートすればよいですが、それ以外の場合、チーム内の他の有力選手は皆、各サポート企業が囲っているという状況になっているからです。
新人選手の契約金をどこで負担するかも問題です。これは別枠で球団で負担ということなら、年俸の安い有力な新人選手を担当したサポート企業に対する不公平感がでてくるでしょうし、サポート企業が負担というのは割に合わない話です。
チーム編成を考える責任者は誰になるのでしょうか?まぁ球団のGMというのが妥当かと思いますが、トレードや戦力外通告を行うときに、各選手の背後についているサポート企業の影がちらつかないでしょうか。また監督の采配について、サポート企業が「なぜウチの選手を使わないのか?」といいだしたら最悪です。シーズン中のトレードや外国人選手の獲得も難しくなるでしょう。それと、外国人選手のサポートには特別に大きなリスクがあります。讀賣のミセリのようなケースで解雇を英断する権限はサポート企業が持つのか、それとも球団か。。。
トラブルケースを考え出したらキリがありません。しかし、予想できるトラブルに対してその対策を考えておかなければ、NPBの審査の段階ではねられてしまいますね。案外、サポート企業に負担可能な金額を入札してもらって、入札金額順にインセンティブを含んだ年俸の高い選手から順に機械的に割り当てて行くといったシンプルな割当方法がよいのかもしれません。新しい仕組みを受け入れてもらうというのは大変なことです。しかし、大きなメリットもあるわけですから、想像力を働かして実現可能なスキームを構築していきたいものです。
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