NHKスペシャル「待ったなし プロ野球改革」
5月4日のNHKスペシャルで、讀賣:滝鼻オーナー、オリックス:宮内オーナー、ソフトバンク:孫オーナーの参加によるTVオーナー会議がありました。
孫オーナーの言ってることには勢いがあり夢もあります。
「大リーグに勝てる世界一のチームをつくりたい。」「日本のプロ野球で年俸を抑えたら、優秀な選手がどんどん大リーグへ流れてしまう。」「完全自由競争が理想的な姿。」「戦力の不均衡があっても、その強大なチームへの対抗心という軸で盛り上がることはできる。」
しかし、バブルというのは、いつかはじけます。上を向いて歩いていこうという姿勢はよいのですが、徹底的な弱者切り捨て、金のない者は黙ってろ~的な考えにはついていけないところが多々あります。この人には周りが見えていない。。。でも、こういう夢を語る人も必要ですね。
一方で宮内オーナーが盛んに主張していた共存共栄のビジネスモデルは、このblogの「市民球団の戦力」というところで書いた「各チームの戦力が均衡して、どのチームが優勝するかわからないという結果の不確実性があって、はじめてペナントレースが白熱し、リーグ戦の商品価値が高まる」に似たものでした。オリックスバファローズは不公正な分配ドラフトによる統合で強くなったはず(?)だから、オリックスのオーナーがこれを言うのはおかしな話ですが。。。
しかし宮内オーナーの発言は、至るところで支離滅裂。たまに正論ぶった発言がありますが、結局は自らの努力が足りないことを得体の知れない何かに責任転嫁しているという印象を持ってしまいます。また全てが縮小均衡による共存共栄。これといった戦略も持たずに、何かの教科書に書いてあることを抜粋して取り上げて、ワーワー騒いでいるだけじゃないのか?と思ってしまいます。
「巨人は昔のダントツの人気が異常であって今の人気低迷で普通になりつつある」・・・だから何が言いたいのか?NHKの調査ではオリックスの人気は12位でした。巨人の人気低迷を喜んでいる場合じゃないでしょう。。。
「イチローのような大スターがいても、強くて魅力のあるチームでなければ何も注目されない」・・・イチローがいたときはそれなりに盛り上がっていたはず。より重要なのは、イチロー放出後のチームつくりをどう考えていたのか、という点では?
「昨年の球団統合で逆風が吹いているが、これから近鉄ファンと新しいファンを取り込んでいきたい」・・・そのために何をしたの?オリックスのやってることは近鉄ファンを離れさせることばかりでしょう。そこをなぜ理解できないのか?
讀賣の滝鼻オーナーは存在感なし。印象に残ったのは、冒頭の「今までは巨人がセの5球団を支えてきたが今度は交流戦があり11球団を支えなければならない。」という発言。確かに、観客動員やTV放映権による収入増は巨人戦でのご利益があるかもしれませんが、プロ野球が讀賣中心で成り立っているという勘違い。リーグ戦というのは相手があってはじめて成立するものです。
そもそも讀賣の交流戦に対する本音は、北海道、東北、九州というセリーグのチームのない地域で試合をやって、讀賣新聞の拡販につなげたいということでしょう。マスコミお抱えでTV放映権による利益を独占し、野球協約というルールを自分たちに都合のいいように作り上げてきた。。。もちろん、他球団に比べ多大な営業努力もあったのでしょうけど、讀賣中心の発想からファン中心の発想へ、コペルニクス的な展開を期待したいものです。
また滝鼻オーナー自身で、金をかけているのになぜ勝てないのか?有力選手を集めているのになぜ視聴率が下がり続けるのか?という当りをまだ理解できていないのかなと感じました。
NHKのTVオーナー会議という試みには賛同しますが、これでは「なぜプロ野球の人気が低迷してきたのか」の答えとして、「こういう人たちがオーナーをやってるからです」といってるようなものではないでしょうか。
子供たちの将来なりたい職業の第一位にプロ野球選手が返り咲いたそうです。その理由はイチローや松井選手など大リーグで活躍している選手へのあこがれとか。
オーナー経営者のセンスのなさ、コミッショナーのやる気のなさ、マスコミの大リーグに対する偏向報道。。。どこが悪いのか、みんなわかっているはずなのに直すことができないもどかしさ。
大阪市民球団の誕生でプロ野球を盛り上げていきたいと強く感じさせてくれる番組でした。
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コメント
こんばんは。
番組のレポートありがとうございました。
番組自体見ていなかったもので。
宮内さんには、開いた口がふさがりませんね。
こんな人に関西の野球文化が蝕まれていくのかと思うとつらくなります。
大阪市民球団を入れて、宮内さん出ていって!といいたい。
投稿: MASARU@大阪 | 2005年5月 7日 (土) 03時54分
MASARUさん、コメントありがとうございます。
宮内オーナーも少しはまともなこともいってるんですよ。
全ての球団の経営が成り立つために、支出を減らしたい。だから選手の年俸に制限をつけましょう。
全ての球団の経営が成り立つために、収入を増やしたい。そのためには全ての球団が勝てる可能性のあるチームになることが必要。だから、特定球団にいい選手が集まる仕組みを変えましょう。
ただ、そこからの発展がないんです。まず、なんといってもファンのために、という発想がゼロ。地域のためにというものありません。もちろん、選手のためにというのもありません。全てが「経営が成り立つためにどうすればよいか」という観点でしか語られていないんですね。この辺は昨年の合併騒動の時も同じ。だから私の宮内オーナーに対する評価は、「優秀な経営者かもしれないがプロ野球の経営には向いていない」ということです。
それに比べて孫オーナーは対極的。ファンが喜ぶためには強いチームにしたい。そのためには投資は惜しまない。チームが強くて、ファンが喜べば、観客動員も増え、赤字だって減るでしょうという発想。
ただし、これで喜ぶのはソフトバンクホークスのファンだけ。いや、孫オーナーに言わせれば、「強いソフトバンクホークスとの試合を見れる他チームのファンのためにもなる」となるのでしょう。
そして、落ちこぼれて経営破綻した球団はどんどん新しい経営者に変わればいいじゃん、ということですね。
う~ん。。。これも素直に賛成できないですね。
投稿: 紅の牛 | 2005年5月 8日 (日) 22時50分
>クラシック映画館 兼 ミステリ小劇場さん、
トラックバックありがとうございます。
こちらからもTBしておきました。
ただ、私は応援していたチームをなくしてしまい。交流戦に期待しているクチではありませんので、一緒に盛り上がることができません。その点はごめんなさい~
>なんでも世界一!さん
トラックバックありがとうございます。
私も世界一!のものを知っています。
それは大阪近鉄バファローズのファンです。
数は少ないかもしれませんが、その情熱は間違いなく世界一!です。
そして今度は、大阪市民球団を世界一!の球団にしてみせます。乞うご期待を!
投稿: 紅の牛 | 2005年5月 8日 (日) 22時55分
TBありがとうございます。
今回のNHKスペシャルは、今まで閉ざされた世界だけで議論していたオーナー達が表で議論をしてくれたことに個人的には意味を感じています。
こちらからもTBさせていただきます。
失礼しました。
投稿: hoddy | 2005年5月10日 (火) 05時56分
hoddyさん、TBとコメントありがとうございます。
>今まで閉ざされた世界だけで議論していたオーナー達が表で議論をしてくれたこと
表で議論をすると、今までにない批判を浴びることにもなるでしょう。その批判を真摯に受け止め、変えるべきところは変えていくという姿勢を持つのであれば、表の議論は意味があることになります。
しかし、表で議論したことに満足し、結局、変えようとしないのなら、意味はありません。
早く自分たちの過ちに気付いて欲しいというのが私の願いです。
ただ、後退より前進であることは確かですので、今後に期待をしたいと思います。
なにわっちさん、考える葦のブログさん、TBありがとうございました。
投稿: 紅の牛 | 2005年5月10日 (火) 23時31分