合併球団と新規参入球団に対する独占禁止法
以前の野球協約には、プロ野球への新規加盟料として、譲渡を受けた場合に30億円、新規参入の場合に60億円が必要であると定められていました。この規定は、以前、政界疑惑で話題となった某社が大洋球団を買収しようとした際、その買収を妨害するために設けられた規定です。すなはち、不適切な企業に対する新規参入障壁とすることを目的として制定された規定であり、活用されることが目的ではありませんでした。結果的に、NPBは、昨年の9/25の実行委員会で、これらの加盟料に代わり、保証金25億円+野球新興協力金4億円+加入手数料1億円とすることで合意し、楽天の新規参入とソフトバンクの譲渡に適用されました。
ところで、近鉄球団とオリックス球団は、昨年の6/13(思い出したくもないですが^^;)に合併することを発表しました。ここで問題なのは、近畿日本鉄道がプロ野球という事業から撤退するための方策として、「売却」と「合併」という2つの選択肢を比較検討した時点で、「売却」には新規参入障壁を目的とした加盟料の存在があり、「合併」の場合にはその加盟料の免除が約束されていたという点です。
そこで、私は7月13日に前職が公正取引委員会の委員長である根来コミッショナーに対し、加盟料の独占禁止法(独禁法)に対する違法性を指摘した上で「球団譲渡時に発生する加盟料を10年後に返却する10億円程度の預託金のようなものに改めるべきである。」との内容を、野球協約の変更文案付きの文書で提言しました。しかし、加盟料の見直しはなされないまま、近鉄球団とオリックス球団の合併(新設合併から営業譲渡への形態変更があったため正式には統合と表現)が承認され、その承認後において、国会での議論や公正取引委員会の非公式なコメントも受けて、やっと加盟料が違法性を持っているとの認識の元、加盟料を撤廃することが話し合われたわけです。
2球団破綻→2組合併の1リーグ制への移行。これが当初の目的だったので、加盟料の見直しを早期に行っていれば、近鉄球団に加え、再生機構入りが秒読み段階のダイエー球団にも有利な売却先が出てくることが懸念されたため、見直しができなかったんですね。逆に合併球団に対する加盟料免除は議論なしの即決で決まっています。
またパリーグの小池会長はパの4球団と連名で、ダイエー球団とロッテ球団に合併を促す要望書を提出しました。セリーグの豊蔵会長はプロ野球選手会の要望した特別委員会の招集について、「招集する必要がない。」という決定を先延ばしにすることにより、選手会との対話を避け続けました。
さらにプロ野球初のストライキを受けて、合併と新規参入という打算的な解決を図った後においても、楽天に著しく不利なプロテクト制度が採用されました。これについては選手の確保について差別的な取り扱いをしているという観点で、独禁法第八条5項に禁止事項としている「事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること。」に相当する行為ではないかと思っています。前述の分も含め、公正取引委員会にご意見メールを送ったんですが。。。当然のように無視されました(^^;
何を今さら!というお話ばかりですが、要するに、大阪市民球団の新規参入を審査するNPBは、適法性よりも一部オーナーの思惑に基づいた恣意性を重視する組織であるということを肝に銘じる必要があるということです。もちろん、NPB自らが組織改革、意識改革をしてもらうことが一番なのですが。
なお合併問題に関わる独占禁止法については、以前、神戸大学の泉水教授のBBS(新しい掲示板)で議論をさせていただきました。法律素人の私には理解度30%位?でしたが。。。
そのうち、大阪市民球団の新規参入と独占禁止法についても考えてみたいと思います。
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