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2005年5月21日 (土)

大阪市民球団の新しい構想(以蔵さん)へのコメント

市民球団設立準備室の構想に加え、夢球団設立連絡会に加わっている以蔵さんのサイトで新しい大阪市民球団の構想が出てきました。一つの考え方にとらわれることなく、いい面のみを吸収して新しい構想へと発展させていく第一歩になればと思います。
ここでは、以蔵さんの構想について、格好良く言えばフィージビリティスタディ(厳しい状況を想定して実現可能性があるかどうかの調査を行う)っぽいことをしてみたいと思います。

1.預託金の返却

出資金として集めた100万円×1万口は使ってしまうことが前提のお金です。これを預託金扱いにして、10年後に返却するとなると、大阪市民球団を運営している10年間で100億円を集めなければいけません。まずNPBへ支払う30億円のうち、25億円が預託金扱いになっていますので、25億円は確保できます。残りの75億円を10年間で確保するには、平均7.5億円の黒字経営を持続する必要があります。既存球団でこの程度の黒字経営をしているのは讀賣と阪神のみ。預託金制度は讀賣と阪神なみの経営ができてはじめて成立する制度ですね。

もし、10年間の平均で球団の収支がゼロだった場合、預託金返却の原資はNPBから戻ってくる25億円のみとなります。ここで問題となるのは、会員の規約に「預託金は10年後に全額返却する」と明言するのか、あるいは「預託金の返却金額は10年間の球団経営の状況により変動する」と預託金の元本保証をしないのか、という点です。前者の場合、返却の原資が不足している(俗に言う不渡り手形)わけですから、10年後に球団は破綻してしまいます。後者の場合、球団の収支が悪ければ悪いほど10年後の返却金が下がっていくので、会員権の時価は下がっていきます。10年間の平均で収支ゼロなら返却原資は25億円。赤字ならその25億円も赤字補填に回されるでしょうから、返却原資は限りなくゼロに近くなってしまいます。そうなると、完全な売り手市場となり、「売りたいのに売れない」「大阪市民球団で会員権を引き取ってくれ」という苦情が出てくるようになるでしょう。

したがって、あらかじめ球団の収支の見込みにあわせた返却金を設定することが必要であり、そのためには球団の収支予測の妥当性が重要になってくると思います。

2.大阪市民球団の収支予測

まず会員に対する便益の観点から収支を考えてみます。
正会員の場合、10年間で、100万円+2万円×10年=120万円を支払って、10年後に100万円が戻ってきます。したがって、トータル的な出費は10年間で20万円となります。
これに対し、主な便益として、「ユニとヘルメットの広告」、「合計6人分の無料入場の権利」、「球団ロゴに使用や球団グッズの販売のライセンス権」が得られます。
ユニとヘルメットの広告は、球団によりますが、概ね年間数億円で設定されていますので1試合当り最低でも100万円の価値はあるでしょう。また空いていればいつでも指定席にも座れる権利というのは、自由席の年間パスと年間指定席の中間的な意味合いのものですので、10万円位の価値はあるでしょう。これが6人分×10年となると、600万円になります。
ライセンス権は詳しくはわかりませんが、年間30万円とすれば10年で300万円。
したがって、10年間のうち、1試合広告を出すと仮定すれば、20万円で1,000万円の権利が手にはいるということになります。これは会員にとって大きなメリットですが、逆に大阪市民球団の側から見れば大きな負担になってしまいます。既存の球団の収入源となっている「ユニとヘルメットの広告」「入場料収入」「ライセンス権」をこの会員特典で使ってしまうと、大阪市民球団の収入源はどこに求めたらよいのでしょうか。

3.球団運営会社の独立採算性

球団運営会社をオーナーズ・クラブとは別組織にして独立採算性にするということは、球団で赤字が発生した場合の負担はオーナーズ・クラブに頼らないということでしょうか?では、その赤字分は誰が負担するのでしょうか?会員の出資金で球団運営会社を設立するということは、球団運営会社の株式を会員が分割で所有するという形態になりそうです。その場合、独立採算性とするのではなく、赤字リスクをオーナーズ・クラブが負う(もちろん球団収支が好調の場合には配当を得る)とするべきではないでしょうか。赤字リスクを負わないオーナーズ・クラブからオーナーを出して、球団経営にオーナーの意見を参考にするというシステムでは、うまく機能しないような気がします。

「どうすれば多くの人に会員になってもらえるか?」
「どうすれば多くの人に球場に来てもらえるか?」
という観点で見ると、この構想は素晴らしいと思います。しかし、会員の特典を厚くすればするほど、大阪市民球団の経営は圧迫され、結果として会員に約束した出資金の返却ができなくなるという悪循環に陥る可能性も十分に考えられます。会員サイドから考えた「よい構想」を今度は球団経営の観点から見直していき、実現可能な構想へと発展させていくことができればいいと思います。

今週はblogの更新をさぼってしまいましたが、またいろいろと考えてみたいと思います。

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