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2005年5月14日 (土)

国税庁長官通達と企業に頼るプロ野球

昭和29年。終戦間もない日本でプロ野球を大衆娯楽として発展させるため、国税庁長官が一つの通達を発しました。要点は、球団の赤字を親会社が補填した場合、広告宣伝費として認められる金額は親会社が損金として処理できるという点です。

オリックスの宮内オーナーが先日のNHKスペシャルも含め、再三、「球団経営が黒字化すれば球団名から企業名をはずせるが、赤字のウチははずせない。」と言っているのは、この通達があるからなんですね。もしチーム名から企業名を完全にはずした場合、球団の赤字を親会社が補填しても「広告宣伝費」として認められない可能性があるわけです。そうすると親会社は費用負担を損金として認められない。それは困るということですね。
なんで親会社は損金扱いにしてくれるとありがたいのか?その答えは単純です。損金の分、親会社の利益が減りますので、利益に課される法人税の負担が減るからです。
例えば、親会社の利益が50億円、球団への補填が10億円、法人税率が50%とすると、損金として認められた場合、法人税は(50-10)×0.5=20億円。損金として認められないと50×0.5=25億円。もちろん球団が黒字化すれば、補填の必要がないから、球団が親会社の「広告」になっているかは関係ないとなるわけです。わかりやすく言いましょう。オリックスにとって球団経営は節税対策の一つになっているということです。

しかし、連結会計制度が導入され、株主代表訴訟など、株主の目も厳しくなる中で、節税目的の球団経営がいつまでも容認されるとは思えません。理想は市民球団を標榜している広島カープのように、親会社の補填なしに経営を黒字化させることでしょう。

ところで、大阪市民球団はこの国税庁長官通達の恩恵を受けられるのでしょうか?もちろん、そんなの当てにしないで黒字化させる!というのが目標なんですが、赤字が続いたら即解散ということでもいけません。市民球団設立準備室の構想によれば、球団の株主は個人出資者がなる(のかな?)ように思えます。球団名に企業名がつく可能性もまずないでしょう。

球団の収支から選手年俸や経費が分離されると、30億円程度の支出のみが一気になくなるので、黒字化する可能性は十分にあります。で、黒字が出たら20億円を上限にサポート企業にバックするというのが構想のスキームです。問題は、サポート企業にバックするほどの黒字は出ないという場合、サポート企業が負担する年俸や経費といった負担を国税庁長官通達に照らし合わせて損金扱いにしてもらえるかどうかという点です。サポート企業は選手のスポンサーになってヘルメットやユニ袖に広告を入れるんでしょうから、広告宣伝費という名目は通じそうです。しかし、国税庁長官通達の対象は「球団の赤字」であり、恩恵を受けるのは「球団の赤字を補填した親会社」です。大阪市民球団の構想では球団は赤字になりにくいスキームですし、サポート企業は球団の親会社ではありません。やはり無理ですね~。国の通達に情け容赦が通じるとは思えません。

赤字というリスクのカバーを国税庁長官通達に頼るとしたら、次のようなスキームが必要と思います。
・球団はサポート企業の共同出資会社とする。
・選手契約は球団×選手間でかわす。
・サポート企業は原則として1企業1選手のスポンサーとなり、ヘルメットやユニ袖に広告を入れ、その広告費の名目で球団へ資金を提供する。

ただし、このスキームはあくまで、「赤字リスクを国税庁長官通達に頼る」ためのスキームであって、大阪市民球団の理想的なスキームというわけではありません。もう少し、いろいろと考えてみたいと思います。

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