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2005年6月 1日 (水)

大阪ドームの経営形態は第三セクターかPFIか

大阪ドームは地方自治体と民間企業の共同出資法人である株式会社大阪シティドームが経営を行うという第三セクター方式で管理・運営されています。が。。。経営破綻で現在特定調停中ということは前にコメントしました。

ところで、第三セクターに似た経営形態として、PFIというのがあります。両者に対し、様々な定義があるようですが、一般的な考え方の例を次に示します。
※参考文献:第三セクターとPFI 役割分担と正しい評価 宮本康夫(著)

第三セクター
官主導で公共性が高く収益性が低い事業に対し、民間の活力(資金力や人材)を活用するため、官と民の共同出資法人(株式会社)で管理運営する。一般に赤字資質の事業に適しており、三セク企業の目的は、公共貢献(事業に公共性があることが原則)と収支改良(民間活力の利用による赤字低減→官の負担低減→税金支出の低減)である。

PFI
民間出資で特定目的会社(SPC)を設立し、基本的に企画・設計・施工・管理・運営を一貫して行う。あくまで公共性のある事業が対象であるが、具体的な事業は民主導(多くのリスクが民間へ移転)で行われ、官は特定目的会社と契約を結び、それをチェックするという立場である。一般に黒字資質の事業に適しており、特定目的会社の目的は利益追求である。

で、大阪ドームの経営形態は第三セクターとPFIのどちらがよいのでしょうか?

まず、第三セクターで失敗した原因を考えてみます。

・立地場所が悪い。他の候補地としてあげられていた天王寺の方がよかった。
・施設の設計を多目的用としたため、プロ野球の利用に対し犠牲とした部分が多い。
・観客動員の見通しが甘かった。プロ野球で最低3万人がギリギリの採算ライン。
・初期費用(建設コスト)が高い。結局利用しなかった設備などもあるらしい。
・ランニングコストも高そう。

ん~大阪近鉄バファローズの観客動員の低さも一因ですが、それ以上に計画の初期段階(立地~設計)から失敗していたのでは?と思えてしまいます。これでは管理運営段階で三セク企業に優秀な人材を投入しても経営破綻してしまうのは目に見えています。じゃあ、最初からPFIにしておけばよかったでしょうか?確かに立地・設計を含め民主導の事業としていれば、もっとまともな経営ができたでしょう。しかし!PFI法が成立したのが平成11年で平成9年開業の大阪ドームに間に合わなかったんですね。。。残念(^^;
近畿日本鉄道が近鉄球団を「昨年のうちに」手放さなければならなかった理由の一つが、大阪ドームの特定調停(再建計画で大阪ドームの長期利用を義務つけられるのを避けるため)が去年申請されたという点にありますから、この大阪ドームでPFIを活用できなかった(法律ができてないため、検討する余地もなかった)というのはかえすがえすも残念です。

で、肝心なのは、今後の話です。大阪ドームの今後についてオリックスが責任を持たなければならないことは既にコメントしましたが、実はそれ以上に責任を持たなければならないのが近畿日本鉄道です(これも前にコメントしたかな^^;)。
三セク企業の株式会社大阪ドームシティの筆頭株主は大阪市で出資金は20億円。他に大阪府も出資してます。民間企業で多いのは、近畿日本鉄道や大阪ガスの6億円など。近畿日本鉄道の責任は、球団譲渡ではなく球団統合としたため、ダブルフランチャイズとなり、大阪ドームでのプロ野球興行が減少し、先行きが不透明となったこと。もちろん、共同出資者として、経営破綻の責任を応分に負う必要もあるでしょう。

それはさておき、今後の経営形態は第三セクターとPFIのどちらがよいか?という話に戻ります。
まず第三セクターとPFIの選択を行う一つの基準として事業が赤字資質か黒字資質かというものがあります。大阪ドームの場合、事業の初期段階での失敗があり、それをリカバリーする(別の場所に立て直す?)のも事実上無理ですから、今後も赤字資質の事業であると認めざるを得ません。となると、第三セクターのままがよろしいということになります。

また現状は第三セクターとなっている事業を途中からPFIに変えることは可能か?という論点もあります。これについては大阪市議会でも議論されており、結論として、法的に可能であるという見解が示されています(おそらく実例はゼロかあっても小規模なものしかないと思います)。じゃあ、PFIに変えるメリットは何かあるでしょうか?やはり、今さら、無理に経営形態を変えるより、収益構造の見直しに力を注いだ方がよい気がします。

で、収益構造の見直しについて考えてみます。

1.大阪市民球団の興行権を大阪ドームが買い取る。
昨年の球団統合時に同じことをオリックスが大阪ドームに要請し、断られました。これは、オリックスバファローズじゃあダメなんですね。その理由は、試合数が少ない、長期的な見通しが不透明、人気がない、大阪ドームシティにプロ野球興行権を活用するノウハウがない。でもそのアイデアは大阪市民球団でもらうことにします。そのメリットは。。。大阪市民球団のスキームと絡めて、もう少し整理してみます。

2.大阪ドームの命名権を近畿日本鉄道に与える。
球場名を大阪近鉄ドームとすることで、数億円の安定した収入を確保する。
近畿日本鉄道とした理由は。。。
・準公益企業である。
・昨年まで大阪ドームを本拠地とした球団を保有していたため名称に違和感がなく、ファンの支持を得やすい。
・オリックスバファローズ球団から出資を引き上げる(現在の予定は3年後)ことにより、大阪ドームの経営再建に寄与する機会を失うため、その機会を命名権買収という形で与えることにより、社会的責任を果たしてもらう。

3.出資企業を追加する。
第三者割当増資によりIT企業やアミューズメント企業(セガとかナムコあたり)に経営参加してもらい、大阪ドームの利用形態の見直しを図る。

今日はここまで(^^;

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コメント

施設の設計を多目的用としたため、プロ野球の利用に対し犠牲とした部分が多い

とありますがどのような経営的マイナスが生じたのでしょうか?

投稿: | 2013年7月 6日 (土) 02時33分

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