大阪ドームはどうなっているのか?
大阪ドームの不動産鑑定結果が98億8千万円とでたらしい。これは、大阪市が大阪ドームシティー(大阪市が21%出資の第三セクター)から大阪ドームを買い取る価格の参考とされるようです。大阪ドームの特定調停では、これまでにこの買い取り価格が決まっていなかったため、100億円、150億円、200億円の3本立てで再建計画を立てていました。結局、その最安値に落ち着きそうだということです。これに反発しているのが銀行などの金融機関。なぜ反発するのか。。。それは再建計画の複雑な仕組みに隠されています。
まず大阪ドームは総事業費696億円(うち建設費498億円)で平成9年に開業しました。この金額自体は他のドーム球場と比べてべらぼうに高いというわけでもありません。ただ、ほとんど同じ時期にできた神戸グリーンスタジアム(建設費60億円)との差は歴然。ドームにすることで10倍の費用がかかるんですね。そのドームのメリットはイベントが天候に左右されないこととと、多目的に利用できるということ。しかし、その多目的という部分は既に毀損しています。まずは、地盤が軟弱なため、ロックコンサートで観客がジャンプすると近隣に震度3程度の揺れを発生させるという点。これにより、ロックコンサートは大阪ドームで開催できないことになりました。そのあおりを受け、GLAYのドームツアーが大阪ドームでできなくなってしまいました。そこに、また設備更新の不備のニュース。
---共同通信からの引用---
プロ野球オリックス・バファローズの本拠地大阪ドーム(大阪市)が「世界初」として導入した天井部分を上下に動かすシステム「スーパーリング」が、制御装置の部品生産中止で、昨年8月から動かせなくなっていることが14日、分かった。
開業から7年余りで売り物の装置が機能しなくなったことについて、ドームを所有・運営する大阪市第三セクターの大阪シティドームは「(維持・管理について)見通しに甘い面があったことは否定できない」(総務部)としている。
「スーパーリング」は巨大な輪を組み合わせ、地上72~36メートルの間で上下動させる仕組み。野球の試合などでは高く、コンサートでは音響効果を向上させるため低く設定する。
---引用終わり---
見通しが甘いですまされることなのか???
9月に予定されている「B'z LIVE-GYM 2005」は天井が上がりっぱなしの音響効果の悪い状態で行われるわけです。コンサートで1日ドームを借り切ると1400万円。観客動員力のある超一流のアーチストしか使えないでしょう。部品がないから...では超一流に対して失礼というものです。
今の大阪ドームに100億円もだすんなら、青空球場を造れ!といいたくなるところですが、じゃあ、大阪ドームは廃墟とするのか。。。困ったモノです。
話は戻って、大阪ドームの買い取り価格。これは大阪市が「税金」を使って大阪シティドームに支払う金額ですが、この「税金」が原資のお金はその全額が建設資金を融資した17の金融機関に返済されます。現在の融資残高は約410億円。ほとんど返していないんですね(^^;)それもそのはず、15年度決算にして17億円の当期損失。。。利益を上げていないから返せるわけがありません。そこで、特定調停で破綻処理をして、金融機関に債権放棄をしてもらいましょうというわけですが、所有権を三セク→大阪市へ移転させる名目で税金を引き出し、その税金は全部あげるから残りはなかったことにして。。。これが特定調停の骨子ですね。だから銀行は買い取り価格が高い方がいいわけです。今回の不動産鑑定は「大阪ドームは将来どれだけの収益を挙げられるか(収益還元法)」という観点で見積もられました。当然、設備の状況も細かくチェックされたんでしょう。その過程で去年の8月に発覚した「スーパーリング」の不備が今頃露呈したんですね。で、銀行側は「建設にかかった費用と経年劣化の度合いなどを考えて算定すべき(積算法)」と反論しているようです。どちらも不動産価格の見積もり方法として一般に認められている方法ですが、要は税金の支出を抑えたい大阪市と返済額を少しでも増やしたい金融機関の綱引きというわけです。もっとも固定資産の評価額は211億円とのことなので、100億円との見積もりが安いというのにも一理はあります。
ところで、大阪ドームシティーの債務はそれだけではありません。大阪市に30億円、大阪市開発公社と大阪市農協であわせて70億円。他の金融機関の分は建設資金の融資でしたが、こちらは運転資金のつなぎ融資。要するに自転車操業だったわけですね。この合計100億円分は抵当権が設定されていないか、されていても順位が低いので、20年間の再建計画の中では返済されませんが、債権放棄もされず、塩漬けにされます。で、20年後以降に少しずつ返していきましょうという扱い(いわゆる劣後償還)になってます。20年後以降の大阪ドームに100億円返せる力は残っているでしょうか???
金融機関への返済は、大阪市の捻出した税金を全額当てると書きましたが、一括返済ではありません。30億円だけ、運転資金として残しておくため、30億円を除いた分を一括で返済し、30億円は再建期間中(20年)の利益から分割で返すことになってます。なぜ、30億円の運転資金が必要なのか?それは、ビスタルームの保証債務があるからです。ビスタルームは96の部屋があり、保証金1億円、年間利用料1000万円で企業などに利用してもらっており、今年の3月時点で57部屋で契約が結ばれていました。この保証金は解約時に全額返還されるというゴルフ会員権みたいなシステムになっているわけです。で、このビスタルームを契約すると、野球でもコンサートでも何でも見れるわけですが、ロックコンサートはできない、大阪近鉄バファローズは消滅した。。。ということで大阪ドームへの来場価値が下がったと考える顧客の解約が殺到すると、保証金が払えなくなって再度破綻してしまうので、保証金の返還に備えた予備の資金を確保しておくことが必要なわけです。なお、大阪市議会ではこのビスタルームの部分だけホテルに転売して、一般の顧客に利用してもらいながら少しでも収益を上げようという提案もされています。こういうアイデアはどんどん実行していくべきですね。
まぁ結局のところ、再建期間中に30億円の利益を上げて金融機関に返却するという「再建計画」は、「大阪ドームの利用用途の見直しや設備更新などによる抜本的な収益改善策」に基づくモノではなく、金融機関への返済方法に基づくモノということになるわけです。こういうのを一般に「杜撰」といいますが。。。その「再建計画」の中核を担うのがメインの利用用途であるプロ野球の興行。大阪ドームシティとオリックスバファローズは3年契約を結んでいて、今年は34試合、来年以降は少しずつ増やしていくという内容(逆に減った場合には違約金を支払う)になっているようです。4年目以降は、「大阪ドームの特定調停とオリックスの責任」で書きましたが「大阪ドームを単独本拠地にする」との「口約束」があるにすぎません。いまのところ、この大阪ドームの再建はこの「口約束」にかかっているんですね。ところで、近鉄が使っていた頃は、年間使用料6億円(他に警備費などで4億円)、今はその半分なので3億円(その他の分は不明)。この減収分はどうするのかと思ったら、再建計画で考慮されていました。所有者が大阪市へ移転すると、大阪シティドームは大阪市へ賃料を払わなくてはいけません。これが年間4億1500万円。この賃料について最初の3年間、半額免除とするよう要請されています。なぜ3年なのか?その3年に限り、オリックスがダブル本拠地にするからでしょう。
大阪ドームの所有権を大阪市に移すことの意味は、前述したように、建設資金を収益で返済する予定だったのが計画倒れとなったため、税金で返済することになったからです。ところが、そうでなくても財政が火の車の大阪市。大阪ドームを買い取る余裕があるのか、という批判も当然あるんですね。その批判は「大阪ドームに公共性はあるのか」という形でなされています。大阪市民球団の本拠地なら公共性はあるかもしれませんが、オリックスの本拠地としての大阪ドームに公共性なんてないでしょう。また、何ら有効なソフトを提供できず、さらには世界初という鳴り物入りの設備を見通しの甘さで使い物にならなくしてしまった大阪シティドームにも管理者としての資質があるわけがありません。そこで、「指定管理者制度による大阪市民球団&大阪ドーム一括経営案」を考えては見ましたが、「20年間での30億円の返済」「20年後に残る100億円の返済」「約4億円の賃料」「多目的といいながらいくつかの目的に使えない」「これから徐々に始まってくる設備の老朽化」を覚悟の上で手を挙げる企業はあるのでしょうか?(手を挙げるだけなら一人いますが。。。堀江さん!?)
かのイチローが仰木監督に助言した「大阪ドームはたこ焼きドームに改称したら?」くらいのことではもの足りないくらいの抜本的な見直しが求められています。
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コメント
お久しぶりです。
ろじゃあです。
大阪の市民球団という視点で分析を継続されている姿勢、敬服いたします。
先週からちょっと気になる話がネットで流れ始めております。その件のエントリーをTBさせていただきました。大阪ドーム関係も考えるといろいろ考えてしまいます?あれから1年ということもあり、気になるところです。また寄らせていただきます。
投稿: ろじゃあ | 2005年6月21日 (火) 00時32分
申し訳ありません。
どうやらうまくTBがつけられないようで・・・(^^;)。
以下のエントリーをご参照ください。
http://rogerlegaldepartment.cocolog-nifty.com/rogerlegal1/2005/06/post_38ed.html
投稿: ろじゃあ | 2005年6月21日 (火) 00時38分
ろじゃあさん、コメントありがとうございます。
反応が遅すぎました。ごめんなさい(^^;
オリックスと広島が。。。というお話ですね。
まぁ交流戦は広島にとってはマイナス効果だったでしょうけど、オリックスと一緒になれば、マイナスどころじゃない、これまで苦労して築いてきたモノが吹っ飛ぶわけですから、うわさ止まりと思いますけどね。。。
広島といえば、市民球団の元祖といわれていますが、大阪市民球団の目指している市民球団ともちょっと違うようですし、考察してみる必要がありますね。
私にとって広島と聞くと、「江夏の21球」しか思い浮かびません。近鉄ファンになったばかりで、日本一に限りなく近づいたあの日。。。代走の藤瀬選手の盗塁と石渡選手のスクイズ失敗のシーンが今も印象に残ってます。広島ファンにとって、あの試合はどんな形で記憶にとどまっているんでしょうか?
そういえば、近鉄の合併に最後まで賛成しなかったのは広島の松田オーナーだけでした。市民球団として賛成することはできないという言葉を残して。。。
投稿: 紅の牛 | 2005年6月26日 (日) 23時48分
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