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2005年7月10日 (日)

2リーグ制誕生の秘話

2リーグから1リーグへ。。。
表面化こそしていないものの、水面下で未だくすぶりつつけている構想です。ところで、日本のプロ野球は発足当時、Jリーグと同じ1リーグ制(ただし2部リーグとの入替戦はなし)でした。それが、どのような経緯で2リーグ制となったのでしょうか。
1949年、当時8球団1リーグ制だったプロ野球を正力オーナーが10球団に増加したいとする構想を発表しました。まず毎日新聞に働きかけ加盟申請させた後、さらなる新規参入を募集しました。すると当時のプロ野球人気を反映し、近畿日本鉄道をはじめ、加盟申請が合計で5社も殺到し、紆余曲折を経て、2リーグ制が誕生しました。紆余曲折というのは、急激な球団増加は過当競争を生むという反対派の讀賣・中日勢がセリーグを結成し、新規参入を増やし活性化させるべきという賛成派の東急・大映・南海・阪急勢がパリーグを結成するというセパ分裂がいきさつだったからです。この時、当初賛成派だった阪神は分裂直前に反対派に鞍替えして人気球団の讀賣と同一リーグに残る道を選び、近鉄は南海・阪急という関西私鉄のよしみでパリーグに入りました。
近鉄対阪神。オープン戦では毎年観られる組合せですが、公式戦(日本シリーズ)ではとうとう実現することなく終わってしまいました。「交流戦と日本シリーズの組合せ」で書いたとおり、55年間で日本シリーズに出場したのはともに4回ですから、もともと滅多に見れるモノではなかったんですが。。。
結局、この二リーグ分裂時の阪神・近鉄の思惑の違いが、マスコミの力を利用し全国展開を図るセリーグと関西の私鉄球団を核としたローカル展開のパリーグというビジネスモデルの違いとともに、相交わることのない55年の歴史を刻み、球団の繁栄と消滅という岐路を生んでしまいました。
阪神の選択を「裏切り者」とみるか「賢い選択」とみるか、意見の分かれるところでしょう。しかし、確実に勝者とは言えそうです。じゃあ敗者には何も残らないのでしょうか?
大阪市民球団の設立は敗者の残骸が復活を賭けた戦いであるとも言えるでしょう。

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2005年7月 7日 (木)

無料招待日(大阪市民デー)に無料招待券を配布する暴挙

大阪ドームにおいて、6月27日(月)のオリックス×東北楽天戦での大阪府民デーに続き、7月4日(月) にオリックス×西武戦で大阪市民デーが実施されました。それぞれ、大阪府民や大阪市民が無料で招待されるというイベントです。このイベント自体は大阪近鉄バファローズの頃から行われていたモノですが、無料招待ということで、「無料招待券の罠」にはまらないよう注意が必要です。

ところで大阪市民デーでは、昨年までと異なり、住所・氏名などの個人情報を記載したモノを提出させ、また翌日の無料招待券を2枚もプレゼントしたそうです。これはどういう意味があるでしょうか?

このサービスを実施した側の狙いは次のようなモノでしょう。
・無料とはいえ、球場へ足を運んだ人に「翌日限定」の無料招待券を配布することで、2日続けて来場してもらい、その後、リピーターになってもらいたい。
・2枚配ることで、普段は来場しない知人や家族を同伴してもらい、野球の楽しみを多くの人に理解してもらいたい。
・交流戦あけの中だるみの時期に1人でも多く来場してもらいたい。
・個人情報を入手することで、1度は来場した人に、今後、効果的なダイレクトメールを送ることができる。

確かに、何もしないよりは観客の数は増えたのでしょう。しかし、本来、サービスというモノは、試合をエキサイティングにするしかけや、試合以外の要素に付加価値をつけることにより、観客に「有料で観戦する価値がある」と思わせるモノであるべきです。無料来場者に無料招待券を配り、わずか9日間のウチ、3試合も無料で観戦できてしまう状況は、まさに「無料招待券の罠」にどっぷりとつかってしまったと言わざるをえません。しかも、その対象は大阪市民ですから、概ね30分~1時間程度で大阪ドームへ通える優良顧客です。この優良顧客に無料観戦癖を蔓延させてしまっては、もうこれ以上の固定客は望めません。年間チケットを購入している優良顧客も来年の再購入をためらうでしょう。このような無料観戦者は球団の経営に寄与しているのでしょうか?

ところで今年から、観客数は実数発表に変更されました。

この試みの真の狙いは、「数字を明確にすることで不透明性を拭い、ファンの野球に対する視界をクリアにする狙いがある」と言われていますが、その発表方法を見ると「統一性がないため横並びで比較できない」という、何ともお粗末な状況です。

ところでオリックスの場合を見ると、チケット半券と年間指定席(の未来場分)の合計が観客数として発表されています。ということは、観客数20,000人といっても、年間指定席を持ちながら来なかった人が5,000人、無料招待券の入場者が10,000人、有料入場者が5,000人ということもあり得るわけです。この場合、試合に有料の価値を見いだしている人は5,000人ということになります。
このように、興行として意味のある観客数は5,000人なのに発表は20,000人というのは、「粉飾決算」に類する行為と考えられます。つまり、本当は経営が苦しい、つまり「無料招待券の罠」にはまり、将来の収益が期待できない状況であるにもかかわらず、表向きは経営が健全であるというような発表をしているという状況です。「粉飾決算」が罪になるのは、投資家が投資先の企業の経営状況がいいものと信じ込んで投資を続けていったら突然破綻し、投資した資金を回収できなくなるということが起こりうるからです。逆に経営状況が悪いところに投資するのは、「ハイリスクハイリターン」を覚悟の上ですから、突然破綻してもやむを得ないで済まされるわけですね。

今回、オリックス及び大阪ドームシティは大阪市民デーが無料招待であることは大々的に公表していましたが、その来場者に無料招待券を2枚配布したという事実は公表されたのを確認できませんでした。実際の来場者がblog等で公表してはじめて知ることができたわけです。このように、公表分以外にも秘密裏に無料招待券をばらまいているということは、通年でその実数がどの程度なのか、見当もつきません。また、高額な年間指定券を購入しながら来場しないのがどの程度なのかも知ることができません。しかし、観客数の発表だけみると平日にして20,000人ということで、「それなりに入っている」という印象を持ってしまいます。この「粉飾決算もどき」によって来年、年間指定席を購入した人(実際、高額な席は、ほとんどが企業)は、日々発表されていた観客数は虚像であって、「オリックスの試合」は高額な投資をするに見合うモノではなかった。。。と愕然とするわけです。

無料招待券のバラマキで「試合という商品の価値」を低下させ、観客数の発表で「粉飾決算もどき」の虚像を示す。。。これはオリックスバファローズを真剣に応援しているファンに対しても「屋上にかかった梯子をはずす」ような行為と言えるでしょう。

ファンの存在を無視して誕生した統合球団は、今も崩壊への連鎖が脈々と進行していると言わざるをえません。このような経営センスの悪さは、それを反面教師として学ぶことができるという点にしか価値を見いだすことができません。

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2005年7月 5日 (火)

無料招待券の罠

無料というのは一種独特な響きがあります。思わず「何?」と気になります。後で無駄なモノとわかっても、「無料だから」ということで納得してしまいます。実際、世の中には無料サービスがあふれています。具体的にどんな無料サービスがあるでしょうか?

1.携帯電話の無料機器
2.試食、試飲、新製品の無料配布
3.デパートなどでの無料イベント:アンパンマンショー
4.アパマン情報、ホットペッパー
5.無料メール、無料HP、無料BLOG
6.ポケットティッシュの配布:消費者金融の宣伝

ところで無料といっても、そのサービスを提供するために必ず、何らかのコストがかかっています。そのコストは誰が負担しているのでしょうか?
1~3は、無料といいながら、その後に続く有料部分のサービスや商品を購入してもらうのが目的です。まぁ3はデパートでの買い物ということで、無料サービスそのものとは直結しませんが。。。
4~6は、無料サービスに広告宣伝的な要素を付加していて、その一次的なコストは広告主が負担していますが、最終的には、その無料サービスの受け手がその広告に掲載された有料サービスや商品を購入することによってコストを回収するという仕組みです。

まぁ結局のところ、完全に無料のモノというのはないわけで、ほとんどの場合が、無料サービスの受け手がそのコストを負担する仕組みになっているんですね。ただ、1のように無料サービスの受け手とコストの負担者が1対1に対応するモノから、6のようにコストの負担者がごく一部の有料サービスの利用者に偏ってしまうモノまでいろいろな形態があるということです。

と。。。前置きが長くなってしまいましたが、プロ野球の試合での無料招待券はどのような性格のモノでしょうか?ここで極端な例として、正規料金での観客動員力が1万人という球団が、無料招待券を継続的、無差別的に配布しまくって、観客動員力が2万人になった場合を考えてみます。

まずメリットは。。。
・上の2のように、プロ野球をほとんど見たことのない人が無料招待券で観戦することにより、その良さを知り、次回から有料で観戦する、といった可能性があります。
・上の3のように、無料招待券で観戦しつつ、グッズや飲食にお金を使ってくれる可能性があります。
・上の5のように、試合を開催することにコストはかかりますが、観客動員が増加することによるコストの上昇はわずかです。5も設備やシステム化が完成すればユーザー増によるコスト増の比率は逓減していきますので。。。
・大阪ドームの広告主にとって、観客動員が増えることは広告効果が倍増することになります。
まぁ無料サービスを行う追加コストが安く、有料サービスの利用もある程度期待できるという点がメリットとなるのでしょう。あとは広告効果。また、選手にとっても、観客にとっても、観客の多い方がやりがいや見応えがある(ような気もします^^;)。

ではデメリットは何でしょうか?
・上の3の無料イベントのように、イベントそのもの(プロ野球の試合)の価値が下がります。
デメリットとしてはこの一点が最重要でしょう。そして、この事例のように、継続的、無差別的に配布しまくると、やがて有料チケットを購入する観客が減り、固定客が無料招待券を探し求めるようになります。こうなったらもう致命的です。一般的に無料だから来るという観客は、正規料金で入る観客と動機が異なります。平均化すれば、観戦に対する興味がかなり低い集団であり、応援の度合いや途中退出の比率も異なるでしょう。無料招待券の観客が増えると、観客全体の試合への期待度や関心度が低下し、球場全体の雰囲気が醒めたモノへと変質していきそうです。また年間指定席のようなサービスの価値をも激減させてしまいますので、安定した収益を確保することが難しくなります。

プロ野球の試合の価値が下がるということは、選手にとっても深刻です。よくヒーローインタビューの締めくくりに「応援ありがとうございました。明日もまた応援に来てください!」というセリフが聞かれますが、これは、選手の年俸(の一部)が観客の入場料によって支払われているという関係があってはじめて成り立つセリフです。プロ野球の「プロ」というのは、「野球」を見せる(魅せる)ことによって収益を稼ぐ事業なのですから、無料招待券の配布(タダ券のバラマキ)というのは、本来の目的を損なっているわけです。これはもうプロ野球選手のプライドをズタズタに引き裂くモノなんです。「俺たちの試合はデパートのアンパンマンショーと同じタダかよぉ~」という叫びが聞こえてきそうです。

もちろん、無料招待券を使って観客動員を増やすことによるメリットもいろいろとあります。でもそれは本道ではありません。誰を対象として、どのような効果を目指すのか、その効果はどうやって確認するのか、コストの回収はどうやって行うのか。。。きちんとした営業戦略を立てて、マーケティングリサーチを行い、限定的、効果的に使ってはじめて無料招待券配布のメリットが享受できるんですね。

結局、無為無策で無料招待券の配布(タダ券のバラマキ)に頼って観客動員力を維持しているようなチームはプロ野球の球団と呼ぶにはふさわしくないということです。そのようなチームがないことを願いますが。。。大阪市民球団ではより効果的な無料招待券の使い方を考えたいモノです。

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2005年7月 2日 (土)

今さらながら、1リーグか、2リーグか

小林至氏の著書「合併、売却、新規参入。たかが・・・されどプロ野球!」。ソフトバンクの孫オーナーは、この本を読んで、面識のない小林氏を球団に招いたとのことです。このヘッドハント?のお話は「闘争-渡辺恒雄の経営術 三宅久之」に書いてました。
ところで、小林氏の著書では「日本のプロ野球は1リーグ制にすべし」が結論になっています。小林氏の主張をまとめると。。。
・日本のプロ野球が大リーグのファームに成り下がっている。
・大リーグといっても所詮はアメリカの国内リーグ。
・大リーグチャンピオンとアジアチャンピオンでワールドチャンピオンを決めるべき。
・アジアカップは、日本4、韓国2、台湾1、中国1の8チームのトーナメントで争うのがよい。
・日本以外の国でもプロ野球は苦戦している。日本が活性化に一役立つべき。
・ポストシーズンが長ければそれだけ盛り上がる。アジア各国と交流は経済活性化にもつながる。
・このような上位リーグがあるのなら、2リーグではなく1リーグがよい。
・いずれは企業やクラブチームを編成し直して、2部、3部をつくり、入れ替え可能にすればよい。
これは、オリックスの宮内氏が提唱している球団統合→球団数削減→1リーグのシナリオとは異なります。世界戦略を考えると、欧州サッカー型の1リーグがよいという意見です。で、巻末には渡辺恒雄氏のインタビューが掲載されてます。その渡辺氏の主張は、「プロ野球は完全自由競争にすべし」。これは孫オーナーと同じ意見で、宮内氏の「戦力均衡にするため、様々な制限を設けるべし」とは正反対な意見です。まぁつまりは、渡辺氏-孫オーナー-小林氏のラインで1リーグ移行の理論武装が固まりつつあり、考え方は全く異なるが、さらなる球団統合で1リーグ移行を実現したい宮内氏と奇妙に目的が一致しているというのが現状なんだと思います。

日本のプロ野球は1リーグがいいのか、2リーグがいいのか、改めて考えてみます。
仮に12球団体制はそのままとすると。。。
2リーグならセ6+パ6で、それぞれに2軍を持ってます。
1リーグなら12球団で、それぞれ2軍でもいいですが、いずれ2部リーグにして入れ替え有りにしたいところです。そうしないと、下位同士の戦いが白けてしまいます。
1リーグにすると、独立した球団が24になり、入れ替え有りとすれば、2部リーグもそれなりの設備と選手層を持たなくてはなりません。またスポンサーも24、ホーム球場も24必要です。1球団あたりの選手数は半減し、こじんまりとしたチームが全国各地に点在するということになります。そうすると地方都市の球団が増えることになりますが、大手企業のスポンサーがそうそう見つかるとは限りません。そこでリーグの方針として地域密着戦略を掲げ、自治体の支援も仰ぎたいところです。財政基盤が弱いチームもでてきそうなので、リーグ内での所得の再分配を行い、戦力の均衡化も図りたいです。またポストシーズンが長くなると、そちらに目がいきがちで、シーズンの試合の注目度は下がりそうです。国際試合が多くなるということはこれまで以上に人材の交流も活発化しそうです。

ここまで書けばおわかりでしょうか?
小林氏の考え方で日本のプロ野球を1リーグにするというのは、Jリーグ化するということに他ならないワケです。確かにJリーグの制度設計は素晴らしいものがあります。しかし、それはゼロからプロ化を設計したものであり、55年にわたる2リーグの歴史を持つプロ野球とは前提条件が根本的に異なります。プロ野球には、もう既に全国人気型の讀賣・阪神という球団が存在し、その2球団の人気に依存する形でリーグの運営がなされている現状があるワケです。またプロ野球は連戦が可能なため、週6日開催が標準です。それに対し、サッカーは週2日開催が標準。平日ナイターを4日やってある程度の観客動員を図るには、球場周辺(1.5時間以内)がそれなりの人口集中圏でないと経営が成り立ちません。したがって、プロ野球は地方都市より都市型立地の方が向いており、政令指定都市以外の地方都市には球団をおけず、大都市圏に集中してしまうため、結果としてあまり多くの球団数をかかえておけないんですね。この「多くの球団数は難しい」というあたりは宮内氏のいう縮小均衡理論に通じる考え方になりますが。。。

小林氏の考え方は、国内で閉じているプロリーグの場合、国内チャンピオンを決めるため並列的なリーグ構成が適しており、外国のチャンピオンと戦うしくみがあれば、国内は1リーグの2部制にして入れ替え有りにするのがよいというものです。で、前者が米国の4大プロスポーツ、後者が欧州サッカーリーグがその代表とのことです。

しかし、ものごとには「古くなったらどんどん新しくしていけばいい」ものと、「古き伝統こそ大事にしなければならない」ものがあるはずです。アジアカップに大リーグとの真のワールドシリーズ。素晴らしい企画です。でもなんで1リーグじゃないとダメなのか?昨年、渡辺氏は「11球団なら2リーグ、10球団なら1リーグ」といく区分けを盛んに口にしました。1リーグがそんなにいいのなら、なぜ12球団で1リーグにすることを考えないのか?要は「目先を変える」ことを改革と称して、そこに人気回復の糸口をつかみたいのでしょう。しかし、目先を変えることの効果は一時的なモノです。それは交流戦を実施してわかったはずです。そして一度、大きな構造改革をしてしまうと、二度と元には戻りません。「大阪近鉄バファローズ」という素晴らしいチームは、どんなことをしても、もう戻ってこないんです。先日、生まれてはじめて歌舞伎を鑑賞してきました。歌舞伎は大衆娯楽です。しかし、300年以上、同じ様式を受け継いできたことで、伝統芸能の地位を築いてきたわけです。プロ野球界は、55年の歴史を持つチームを一時しのぎのために消滅解体した愚行を2度と繰り返すべきではありません。2リーグ制維持でもできる改革はいくらでもあります。私はプロ野球の1リーグ移行に断固反対の立場でいきたいと思います。

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