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2005年7月 2日 (土)

今さらながら、1リーグか、2リーグか

小林至氏の著書「合併、売却、新規参入。たかが・・・されどプロ野球!」。ソフトバンクの孫オーナーは、この本を読んで、面識のない小林氏を球団に招いたとのことです。このヘッドハント?のお話は「闘争-渡辺恒雄の経営術 三宅久之」に書いてました。
ところで、小林氏の著書では「日本のプロ野球は1リーグ制にすべし」が結論になっています。小林氏の主張をまとめると。。。
・日本のプロ野球が大リーグのファームに成り下がっている。
・大リーグといっても所詮はアメリカの国内リーグ。
・大リーグチャンピオンとアジアチャンピオンでワールドチャンピオンを決めるべき。
・アジアカップは、日本4、韓国2、台湾1、中国1の8チームのトーナメントで争うのがよい。
・日本以外の国でもプロ野球は苦戦している。日本が活性化に一役立つべき。
・ポストシーズンが長ければそれだけ盛り上がる。アジア各国と交流は経済活性化にもつながる。
・このような上位リーグがあるのなら、2リーグではなく1リーグがよい。
・いずれは企業やクラブチームを編成し直して、2部、3部をつくり、入れ替え可能にすればよい。
これは、オリックスの宮内氏が提唱している球団統合→球団数削減→1リーグのシナリオとは異なります。世界戦略を考えると、欧州サッカー型の1リーグがよいという意見です。で、巻末には渡辺恒雄氏のインタビューが掲載されてます。その渡辺氏の主張は、「プロ野球は完全自由競争にすべし」。これは孫オーナーと同じ意見で、宮内氏の「戦力均衡にするため、様々な制限を設けるべし」とは正反対な意見です。まぁつまりは、渡辺氏-孫オーナー-小林氏のラインで1リーグ移行の理論武装が固まりつつあり、考え方は全く異なるが、さらなる球団統合で1リーグ移行を実現したい宮内氏と奇妙に目的が一致しているというのが現状なんだと思います。

日本のプロ野球は1リーグがいいのか、2リーグがいいのか、改めて考えてみます。
仮に12球団体制はそのままとすると。。。
2リーグならセ6+パ6で、それぞれに2軍を持ってます。
1リーグなら12球団で、それぞれ2軍でもいいですが、いずれ2部リーグにして入れ替え有りにしたいところです。そうしないと、下位同士の戦いが白けてしまいます。
1リーグにすると、独立した球団が24になり、入れ替え有りとすれば、2部リーグもそれなりの設備と選手層を持たなくてはなりません。またスポンサーも24、ホーム球場も24必要です。1球団あたりの選手数は半減し、こじんまりとしたチームが全国各地に点在するということになります。そうすると地方都市の球団が増えることになりますが、大手企業のスポンサーがそうそう見つかるとは限りません。そこでリーグの方針として地域密着戦略を掲げ、自治体の支援も仰ぎたいところです。財政基盤が弱いチームもでてきそうなので、リーグ内での所得の再分配を行い、戦力の均衡化も図りたいです。またポストシーズンが長くなると、そちらに目がいきがちで、シーズンの試合の注目度は下がりそうです。国際試合が多くなるということはこれまで以上に人材の交流も活発化しそうです。

ここまで書けばおわかりでしょうか?
小林氏の考え方で日本のプロ野球を1リーグにするというのは、Jリーグ化するということに他ならないワケです。確かにJリーグの制度設計は素晴らしいものがあります。しかし、それはゼロからプロ化を設計したものであり、55年にわたる2リーグの歴史を持つプロ野球とは前提条件が根本的に異なります。プロ野球には、もう既に全国人気型の讀賣・阪神という球団が存在し、その2球団の人気に依存する形でリーグの運営がなされている現状があるワケです。またプロ野球は連戦が可能なため、週6日開催が標準です。それに対し、サッカーは週2日開催が標準。平日ナイターを4日やってある程度の観客動員を図るには、球場周辺(1.5時間以内)がそれなりの人口集中圏でないと経営が成り立ちません。したがって、プロ野球は地方都市より都市型立地の方が向いており、政令指定都市以外の地方都市には球団をおけず、大都市圏に集中してしまうため、結果としてあまり多くの球団数をかかえておけないんですね。この「多くの球団数は難しい」というあたりは宮内氏のいう縮小均衡理論に通じる考え方になりますが。。。

小林氏の考え方は、国内で閉じているプロリーグの場合、国内チャンピオンを決めるため並列的なリーグ構成が適しており、外国のチャンピオンと戦うしくみがあれば、国内は1リーグの2部制にして入れ替え有りにするのがよいというものです。で、前者が米国の4大プロスポーツ、後者が欧州サッカーリーグがその代表とのことです。

しかし、ものごとには「古くなったらどんどん新しくしていけばいい」ものと、「古き伝統こそ大事にしなければならない」ものがあるはずです。アジアカップに大リーグとの真のワールドシリーズ。素晴らしい企画です。でもなんで1リーグじゃないとダメなのか?昨年、渡辺氏は「11球団なら2リーグ、10球団なら1リーグ」といく区分けを盛んに口にしました。1リーグがそんなにいいのなら、なぜ12球団で1リーグにすることを考えないのか?要は「目先を変える」ことを改革と称して、そこに人気回復の糸口をつかみたいのでしょう。しかし、目先を変えることの効果は一時的なモノです。それは交流戦を実施してわかったはずです。そして一度、大きな構造改革をしてしまうと、二度と元には戻りません。「大阪近鉄バファローズ」という素晴らしいチームは、どんなことをしても、もう戻ってこないんです。先日、生まれてはじめて歌舞伎を鑑賞してきました。歌舞伎は大衆娯楽です。しかし、300年以上、同じ様式を受け継いできたことで、伝統芸能の地位を築いてきたわけです。プロ野球界は、55年の歴史を持つチームを一時しのぎのために消滅解体した愚行を2度と繰り返すべきではありません。2リーグ制維持でもできる改革はいくらでもあります。私はプロ野球の1リーグ移行に断固反対の立場でいきたいと思います。

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