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2005年7月 5日 (火)

無料招待券の罠

無料というのは一種独特な響きがあります。思わず「何?」と気になります。後で無駄なモノとわかっても、「無料だから」ということで納得してしまいます。実際、世の中には無料サービスがあふれています。具体的にどんな無料サービスがあるでしょうか?

1.携帯電話の無料機器
2.試食、試飲、新製品の無料配布
3.デパートなどでの無料イベント:アンパンマンショー
4.アパマン情報、ホットペッパー
5.無料メール、無料HP、無料BLOG
6.ポケットティッシュの配布:消費者金融の宣伝

ところで無料といっても、そのサービスを提供するために必ず、何らかのコストがかかっています。そのコストは誰が負担しているのでしょうか?
1~3は、無料といいながら、その後に続く有料部分のサービスや商品を購入してもらうのが目的です。まぁ3はデパートでの買い物ということで、無料サービスそのものとは直結しませんが。。。
4~6は、無料サービスに広告宣伝的な要素を付加していて、その一次的なコストは広告主が負担していますが、最終的には、その無料サービスの受け手がその広告に掲載された有料サービスや商品を購入することによってコストを回収するという仕組みです。

まぁ結局のところ、完全に無料のモノというのはないわけで、ほとんどの場合が、無料サービスの受け手がそのコストを負担する仕組みになっているんですね。ただ、1のように無料サービスの受け手とコストの負担者が1対1に対応するモノから、6のようにコストの負担者がごく一部の有料サービスの利用者に偏ってしまうモノまでいろいろな形態があるということです。

と。。。前置きが長くなってしまいましたが、プロ野球の試合での無料招待券はどのような性格のモノでしょうか?ここで極端な例として、正規料金での観客動員力が1万人という球団が、無料招待券を継続的、無差別的に配布しまくって、観客動員力が2万人になった場合を考えてみます。

まずメリットは。。。
・上の2のように、プロ野球をほとんど見たことのない人が無料招待券で観戦することにより、その良さを知り、次回から有料で観戦する、といった可能性があります。
・上の3のように、無料招待券で観戦しつつ、グッズや飲食にお金を使ってくれる可能性があります。
・上の5のように、試合を開催することにコストはかかりますが、観客動員が増加することによるコストの上昇はわずかです。5も設備やシステム化が完成すればユーザー増によるコスト増の比率は逓減していきますので。。。
・大阪ドームの広告主にとって、観客動員が増えることは広告効果が倍増することになります。
まぁ無料サービスを行う追加コストが安く、有料サービスの利用もある程度期待できるという点がメリットとなるのでしょう。あとは広告効果。また、選手にとっても、観客にとっても、観客の多い方がやりがいや見応えがある(ような気もします^^;)。

ではデメリットは何でしょうか?
・上の3の無料イベントのように、イベントそのもの(プロ野球の試合)の価値が下がります。
デメリットとしてはこの一点が最重要でしょう。そして、この事例のように、継続的、無差別的に配布しまくると、やがて有料チケットを購入する観客が減り、固定客が無料招待券を探し求めるようになります。こうなったらもう致命的です。一般的に無料だから来るという観客は、正規料金で入る観客と動機が異なります。平均化すれば、観戦に対する興味がかなり低い集団であり、応援の度合いや途中退出の比率も異なるでしょう。無料招待券の観客が増えると、観客全体の試合への期待度や関心度が低下し、球場全体の雰囲気が醒めたモノへと変質していきそうです。また年間指定席のようなサービスの価値をも激減させてしまいますので、安定した収益を確保することが難しくなります。

プロ野球の試合の価値が下がるということは、選手にとっても深刻です。よくヒーローインタビューの締めくくりに「応援ありがとうございました。明日もまた応援に来てください!」というセリフが聞かれますが、これは、選手の年俸(の一部)が観客の入場料によって支払われているという関係があってはじめて成り立つセリフです。プロ野球の「プロ」というのは、「野球」を見せる(魅せる)ことによって収益を稼ぐ事業なのですから、無料招待券の配布(タダ券のバラマキ)というのは、本来の目的を損なっているわけです。これはもうプロ野球選手のプライドをズタズタに引き裂くモノなんです。「俺たちの試合はデパートのアンパンマンショーと同じタダかよぉ~」という叫びが聞こえてきそうです。

もちろん、無料招待券を使って観客動員を増やすことによるメリットもいろいろとあります。でもそれは本道ではありません。誰を対象として、どのような効果を目指すのか、その効果はどうやって確認するのか、コストの回収はどうやって行うのか。。。きちんとした営業戦略を立てて、マーケティングリサーチを行い、限定的、効果的に使ってはじめて無料招待券配布のメリットが享受できるんですね。

結局、無為無策で無料招待券の配布(タダ券のバラマキ)に頼って観客動員力を維持しているようなチームはプロ野球の球団と呼ぶにはふさわしくないということです。そのようなチームがないことを願いますが。。。大阪市民球団ではより効果的な無料招待券の使い方を考えたいモノです。

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