仕事の忙しさもあり(^^; 長期にわたり静観している間に、プロ野球界を取り巻く騒動が想定の範囲を大きく超えようとしています。一つ一つの出来事をどう考えればよいのでしょうか。マスコミの報道は、事実は事実として受け止め、一方で必要以上にとらわれず、本質を見極めたいものです。ということで、今回は、阪神タイガース球団株の上場問題について考えてみたいと思います。この問題については、立場によって考え方の方向性が様々ですので、村上氏、ナベツネ氏、NPBの幹部、ファンという4つの座標軸に分けて考えてみます。
まず、主役の村上氏。この人の座標軸はいたって単純。すべての発想が、「投資家から預かった資金(ファンドマネー)を運用して利益を上げる」ということを判断基準にしています。したがって、球団株の上場を提案した理由も、「それによって村上ファンドの運用益が向上する」ということに尽きるわけです。ファンが経営に参加できるとか、球団経営が透明化されるといったことは、あくまで付随的な側面であり、「それを言うことで世論を味方にできる」から強調しているのであって、マイナス面は覆い隠されているため、球団株の上場によって阪神タイガースがどうなるのかという本質はこの人の話を聞いただけではわかりません。上場するというのは、日常的に球団の株が市場で売買されるということであり、ファンが球団の株を取得するというのは、市場の取引の一形態に過ぎないわけです。したがって、市民球団の理念の一つとして、一市民に過ぎないファンが株主となって球団の経営に参加するということを考えるとき、上場するという選択肢はきわめて非効率です。多くの場合、個人で株式を取得する目的は、配当を得る、売買の差額によりキャピタルゲインを得る、株主優待サービスを得るというメリットを期待するものであり、楽天→TBSやライブドア→ニッポン放送のように巨額の資金を投入する場合は別として、個人株主が経営に参加するという仕組みにはなっていません。もちろん、阪神球団の株が上場されたら、多くのファンが株を買うでしょう。でも、その人たちは短期間で売りとばすでしょうか?ファン心理からいえば、棺おけまで持っていきたいところでしょう。株というのは需要と供給のバランスで価格が決定します。確実に買う人がいる銘柄。。。ファンドマネーを預かる村上氏にとってはまさに宝の山です。阪神タイガースの球団株を上場するということは、村上氏の座標軸で考えると、「阪神ファンの財布の金を搾取し村上ファンドの投資家にプレゼントする」ということに過ぎません。上場によって阪神ファンが経営に参加できるなんて戯言にだまされてはいけません。もう一つ、球団経営の透明化。これは、上場がきっかけになるかもしれないといった程度のことでしょう。そもそも透明化って何?と思いませんか。。。球団の収支を包み隠さず公表する。たったこれだけのことです。村上氏の主張が正論というより、単にプロ野球界のシステムがなってない、それだけのことでしょう。まぁ毒には毒を、という意味で村上ファンドという劇薬を球界に処方するのも悪いことじゃないかもしれませんが。
次にナベツネ氏の座標軸。この人の座標軸は、権力志向と讀賣の繁栄といったところでしょうか。この人は球界に対する権力の濫用に、しばしば野球協約を利用しています。この野球協約というものは法律でもなんでもなく、ナベツネ氏の思惑で球界を牛耳るための道具に過ぎません。それは昨年の球団統合~球界再編騒動で嫌というほど思いさらされました。上場はいかんというのも、その根拠は野球協約。一見、筋が通っているようですが、野球協約そのものの筋が通っていないのですから話がややこしいわけです。ところで、この人が讀賣巨人軍のためにと思って行動すればする程、讀賣が没落していくということを本人は気づいているのか、いないのか?気づいていないなら。。。なんて幸せな人なんだろうと思ってしまいます。それと「プロ野球の球団株を上場したら八百長の温床になるのは何故?」。。。クイズ問題としては面白いかもしれません。まぁこういうアクの強い人がいるということは、悪いことばかりでもなく、使いようによってはプラス面に作用することもあるんでしょう。ただ、彼を使いこなすには、相当の器量と野球協約の理解が必要です。
そしてNPBの幹部の座標軸。誰かといえば、根来コミッショナーに小池パ会長、豊蔵セ会長の3人です。彼らの真の座標軸は意外と知られていないように思います。表面的には無責任で役立たずといった評価をしがちですが、そんなことはありません。彼らはナベツネ氏の座標軸に乗って、ナベツネ氏の思惑通りに動く黒子です。それは、昨年の騒動があったときの動き方を見れば明らかです。根来コミッショナーは「権限がないから何もできない」という無責任体質のコメントのみが一人歩きしていますが、たとえば近鉄の球団命名権売却の話は就任早々に即断で却下していますし、選手会のストの際にも影でそれに対抗する文書をばらまいていました。根来コミッショナーの座標軸は、「ナベツネ氏に都合の悪いことは、権限がないから何もできないとし、都合のいいことは権限をフルに使って行動する」と考えるべきです。小池パ会長は当事者能力ゼロ。主体的に物事を考えることは一切しません。昨年の騒動の中では、ナベツネ氏の思惑をうけ、ロッテ×ダイエーの合併容認をパの他球団に強要し、ダイエー球団を恫喝したという行動のみが目立っただけです。豊蔵セ会長は、役人のトップに上り詰める才人でありながら、天下り天国を繰り返しているうちに人間性を失ったロボットとなり、これまたナベツネ氏の操り人形として職務を遂行しているに過ぎません。昨年は「合併問題で特別委員会は開催できない」という「判断を遅らせる」ことで選手会との交渉を先延ばしにすることがあんたの仕事だとナベツネ氏に吹き込まれたのでしょう。結果として、彼はその職務を全うしました。要するにNPBの幹部の座標軸はナベツネ氏の座標軸に連動している。これが基本形です。阪神の上場問題をNPBの幹部に預けるということは、ナベツネ氏に預けるというのと一緒。ナベツネ氏も「根来コミッショナーが任せるべきだ」って言ってるでしょう。それは「俺の思い通りにさせろ」ってことに他なりません。こんなんで、ファンに愛されるプロ野球界なんて創造できるわけがありません。
最後にファンの座標軸。これはいろんな方向性があるっていうのが最重要なことです。ファンと一口に言ってもたくさんの人間がいるんです。だから座標軸も様々。これが基本形です。だから、「ファンのために球団株を上場する」というのは、あるファンにとっては正論であり、またあるファンにとっては暴論になるわけです。ただ、より多くのファンが望むことは何か、と考えることは、よいアプローチと言えるでしょう。ですから、「上場すべきかどうかファンに問うべき」という村上氏の主張はまっとうなことかもしれません(もちろん、その真意は別ですが)。
ということで、阪神タイガース球団株の上場問題について、4つの座標軸を考えてみました。結局、わかったようで、よくわからない(^^; 状況ですが、私の考えとしては「球団株の上場には反対」に集約されます。私の考えていた市民球団のスキームでも、オーナーズ・クラブという名の個人株主を想定していましたが、それは球団の経営になにがしかの責任と情熱を持った1,000人限定という想定であって、球団株を上場して、日常的に株主が入れ替わるということはまったく考えていませんでした。まぁ阪神タイガースの球団株を上場することにやる価値を見出すとすれば、小泉流の「NPBをぶっ潰す」という破壊効果にあるのでしょう。しかし、それは、昨年、「資本の論理で合併するなどとんでもない。55年の球団の歴史と文化を守るべき」という主張をしていたことを180度ひっくり返し、村上ファンドという100%資本の論理で行動する輩に追随することになるわけで、それはそれで、やりきれない思いも残ってしまいます。
千葉ロッテマリーンズ(たぶん!?)と阪神タイガースの日本シリーズがかすんでしまいそうな最近の動き。プロ野球界を取り巻く座標軸は腐ったものばかり。。。と嘆くばかりではいけないと思いつつ、ため息でしかプロ野球界を見つめられないこの頃です。
それにしても、久しぶりにコメントしました~
blogやってますなんて、言えませんね(^^;
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