市民球団は既存球団とどう違うのか?
・市民が球団経営に参加している。
・複数企業の出資に支えられている。
後者の複数企業の出資というのは、既存球団の約半数で既に実現しています。具体的に見ると。。。
・オリックスバファローズ:オリックス80%、近畿日本鉄道20%(今後2年以内の早い時期に撤退との前提)
・北海道日本ハムファイターズ:日本ハム74%、北海道新聞社5%、札幌ドーム5%、JR北海道2%、北海銀行2%、北海道電力2%、サッポロビール2%、他4団体で各2%
・福岡ソフトバンクホークス:ソフトバンク98%、その他2%
・広島東洋カープ:マツダ34%、松田オーナー20%、松田家の系列会社など7団体または個人で46%
・ヤクルトスワローズ:ヤクルト80%、フジテレビ20%
・横浜ベイスターズ:TBS51.5%、ニッポン放送30.8%、BS-i17.7%
・中日ドラゴンズ:中日新聞92.5%、愛知県7.5%
ただ、複数企業の出資といっても、これらの球団と市民球団として考えているスキームはまったく異なります。既存球団では、複数企業の出資をしている場合でも概ね筆頭株主の出資比率が50%を超えており、球団名や球団オーナーも筆頭株主の企業から、という図式になっています。広島は市民球団を標榜していますが、球団名にはマツダの旧社名である東洋を名乗り、経営自体は不特定多数の市民というよりオーナーである松田家に依存しています。ここで考えている市民球団への複数企業の出資というのは、例えば4社×20%というように、特定の一企業が50%超の出資をして支配権を得るというスキームは想定していません。また広島における松田家のような出資企業と密接に関連した資産家による集中支配ではなく、少なくとも1000人以上に小口分散された市民も出資を行い球団経営に参加するというのが特徴になっています。
最近、阪神球団の上場が話題になっていますが、このblogで掲げている市民球団構想では上場はできません。例えば東証では上位10社の出資比率が75%を超えた場合は上場廃止になってしまいますので、4社×20%の安定株主に経営に参加してもらおうと思ったら上場できないんですね。また、市民に出資者になってもらう場合、できるだけ長期的に保有してもらい、長い目で球団を育てて欲しいという狙いがありますので、上場して日々株主が入れ替わるという状況は想定していません。増資により上場すれば、多くの資金を得ることができますが、それは上場した年だけであり、時間がたてば立つほど、M&Aの標的にされるリスクの方が膨らむばかりです。上場のデメリットは、球団側が株主を選べないということであり、八百長うんぬんもそういう悪い株主を入口で排除できないということから言われている話です。じゃあ、株主になる人を制限する規則をつくろう。。。ということになりそうですが、それなら上場しなければいいということになります。しかし、最初だけとはいえ、球団が多額の資金を得るというのは魅力的です。何か資本市場の機能を使って資金を集めるということは考える必要がありそうです。
ところで、ここからが重要なところですが、複数企業が出資していても、その出資比率を抑え、過半数を確保している企業がない場合、球団の経営責任はいったい誰が負うのか?というのが、この市民球団構想の要となる問題です。例えば北海道日本ハムの場合、東京を本拠地としていたときは日本ハム1社で100%出資していましたが、北海道への移転に伴い、地元の10社から計26%の出資を受けるスキームを採用しました。この日本ハム以外の10社は「経営責任はあくまでも日本ハムが負う」という前提で地元球団の出資を引き受けたようです。前に市民球団のオーナーは各出資企業から候補者を立ててもらい、個人出資者の選挙により選出するとしましたが、出資比率が50%未満の横並び(例えば20%)の数社の中から1社オーナー企業を出すというのは、経済原則から行くとどうしても不合理です。不合理なスキームというのは運用していくと必ずひずみが出てしまうものです。これは5%とか10%くらいのオーナー企業出資枠というのを用意しておいて、オーナー選挙に勝った企業がその出資枠を引き受けるということで解決できそう(かな?)です。オーナー企業が交代した場合には、その出資枠に相当する株式を新オーナー企業へ譲渡するわけですね。
このスキームの鍵は、「オーナー企業になるのはメリットがある」かどうかです。そのためには、企業が球団の出資者になるメリットは何かというところから考えていく必要がありそうです。思いつくところは挙げていますが、どうもまだ既存の枠にとらわれすぎている感じもします。IT企業なんかは、球団をコンテンツとして商売で儲けようという発想で、それはそれでいいんですが、そこには市民球団のスキームは不要な気もします。まぁ東北楽天にしろ、ソフトバンクにしろ、地元密着はうたっていますが、オーナー経営者は独裁者であり、市民球団という雰囲気ではないですね。
個人出資者が経営に参加するのはオーナー選挙への参加と球団経営に関して意見を言う場を設定してもらえるという2点です。個人出資者の出資比率は今のところ20%と考えていますが、株式会社における重要事項の決定に対し拒否権を持てるという点で1/3超の例えば35%くらいにするということでもよいかもしれません。重要事項とはもちろん他球団との合併などを含むわけです。この1000人くらいの個人株主は、「村上流のモノ言う株主」であり、球団の価値向上に向けてコメントを出し、オーナーの選挙権をちらつかせながら経営を監視するということですね。当たり前のことですが、1000人の個人株主=球団運営会社の社員ではありません。経営に参加といっても、日々業務をこなしていくというのではなく、外から監視して必要に応じ意見を言い、何かしらの権限(オーナーの選挙権と重要事項の拒否権)を持つというのが、私の考える市民球団における市民の経営参加のスタイルです(今のところは^^;)。
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コメント
はじめました。
すごい調べてますね!
とても興味深く拝見させていただきました。
お聞きしたいのですが、どうやって出資比率を調べたのですか?調べたくても調べられなくてこまってたんです。
教えてください!!!
投稿: モリック | 2005年11月30日 (水) 17時00分
モリックさん、はじめまして~
コメントありがとうございます。
>どうやって出資比率を調べたのですか?
最近の楽天・村上ファンドの騒動の影響で、経済誌やスポーツ誌、ネット、新聞なんかにチラホラ載っています。
全球団の概要がでていたのは、「SPORTS Year!No.130(11/4>>11/17)」という雑誌です。また日ハムの細かい話は昨年の日経ビジネス、広島の比率はネットなどから拾い集めました。
ただ、資料によって微妙に違う数字があったりしますし、非上場とはいえ、出資比率が変更されることもありますから、全てが現在の正確な数字であるとは限りませんので、ご注意下さいませ(^^)
投稿: 紅の牛 | 2005年12月 2日 (金) 00時21分
はい!ありがとうございました!!
早速注文してきました。
とても参考になるのでこれからも観覧させていただきます!!
投稿: モリック | 2005年12月 7日 (水) 11時08分