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2005年11月26日 (土)

「トヨタが「プロ野球」を持たない理由」を読んで

前のエントリーのコメントにあった池島さんご推薦の本、読みました(^^)
前半は、他の書籍の受け売りとか、知っている話が多かったのですが、後半は読み応えがありました。特に中国の情報は詳しいものがほとんどないので、参考になりました。かの国は12億人もいるんですから、「ブレイクスルーするのは時間の問題か」という話もまんざらではありません。しかし、日本の企業は中国のチームに結構、出資してるんですね。プロ野球発展のため、というより、中国市場を開拓するための手段のようですが、まぁそれでアジアリーグなんかが盛り上がってくればNPBも活性化していくキッカケになるかもしれません。
あとは球団数拡大で4球団×4地区体制を目指そう、そのためには球団数拡大が必要で、複数スポンサーによる球団経営を認めさせよう、という主張も共感できますね。ただ著者に言わせると、「1リーグ16球団で4球団×4地区」がよろしいということですが、「2リーグ16球団で、4球団×2地区×2リーグ」とどう違うのか?がよくわかりません。その辺の解説が少ないんですが、4地区の優勝チームを決めて、日本一決定シリーズを4球団のトーナメントで、ということのようです。でも、「改革」は既存のものを破壊すればいいってものじゃないわけで、セパの歴史を受け継ぎつつ、進化していくというスタイルも捨てがたいんですよね。。。まぁハタ目にはどっちも同じようなもんじゃない?と見えそうですが(^^;
ところで、複数スポンサーは現在、半分以上の球団で実現しているので、「複数スポンサーによる球団経営を認める必要があるだろう」という言い回しはちょっとおかしいですね。過半数を出資する企業の存在しない状況を想定しているなら、そう明記すべきですし、それこそが市民球団構想と軌を一にするわけで、その状況での球団経営のあり方といった方向に話が展開してもらえるとありがたいお話となったのですが。。。本では瀬戸内カープが例として挙げられていますが、これは著者の考えではなく、一橋総研理事の下前雄氏の考えを披露しているにすぎません。さらに、「自球団以外の球団にも共同出資して、球団経営が軌道に乗るまで面倒を見る企業があってもいい」の下りは、今、楽天がさんざん叩かれている野球協約第183条に真っ向から違反しましょうということになりますが!?
注目すべきは、サントリーの佐治社長がプロ野球への参入に興味を示しているっていうところです。本気だとすればうれしい話です。「今のままの球界じゃダメ」ってことですが、市民球団構想にのってくれるでしょうか???。。。いや、話にのってくれるような構想をつくっていかなくてはいけませんね!
今の球界は、「企業のためのプロ野球」という軸と「ファンのためのプロ野球」という軸がうまく交わっていない。。。というよりそっぽを向いている状態なんでしょう。「企業のためであり、なおかつファンのためでもあるプロ野球」を目指すことはできないのでしょうか?本では、トヨタが中国のCBLに参入することを期待していますが、トヨタが「プロ野球」を持たない理由というのは結局、NPBには魅力がない、期待も持てないということなのか。。。今のプロ野球には魅力がないからトヨタがプロ野球を変える!という位の展開にして欲しかったですね。
その前に。。。トヨタにはF1も変えて欲しいですね。

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2005年11月 6日 (日)

企業がプロ野球に出資する意味は何か?

企業が赤字覚悟でプロ野球に出資する意味は何でしょうか?

1.球団名に企業名をつけることによる広告効果
通常、企業は犯罪や事故、不祥事といったマイナス要素は別として、企業名を露出させたいと考えており、大企業や新興企業などは多額の宣伝広告費を使っています。球団名というのは、試合のあるたびにマスコミに取り上げられますから、広告効果は抜群です。昨年、近鉄はそこに目をつけて球団の命名権売却を模索しましたがつぶされてしまいました。この時の算定価格が年間36億円。一方で球場の方の命名権売却は認められていてインボイスやフルキャストといった新興企業の知名度が一気に高まりました。ライブドアやUSENに至っては、球団を買いたいというだけで知名度を上げましたが。。。現在、企業名が球団名に全く登場しないのは横浜だけですね。横浜ベイスターズの筆頭株主がTBSだったということは、今回の騒動の前まで案外知られていなかったのではないでしょうか。

2.広告宣伝費としての赤字補填による節税効果
球団の赤字を親会社が補填した場合、広告宣伝費として認められる金額は親会社が損金として処理で着るため節税効果があります。詳しくは「国税庁長官通達と企業に頼るプロ野球」にまとめてあります。

3.親会社の本業とのシナジー効果
讀賣はジャイアンツを新聞の販促に利用しています。少々泥臭いですが、これもシナジー効果というんでしょうか?(^^;。阪神は甲子園の観客を阪神電車で運び、キャラクターグッズを阪神百貨店で売りさばくという最も古典的なシナジー効果を得ています。古典的というのは、今は亡き近鉄、阪急、南海等の私鉄会社が皆同じ戦略だったということですね。短絡的に後者を負け組とは呼びたくないですが。。。IT企業にとっては、プロ野球をコンテンツとして顧客をネットに誘い込むことができれば、本業とのシナジー効果が生まれそうです。どう収益に結びつけていくかは腕の見せ所ですが、今のところは広告宣伝効果と相まってネットサービス全体のページビューを押し上げているといったところでしょうか。

この辺が主だったところでしょう。どれも資本を提供している出資者と球団経営が密接に絡んでいます。現行の野球協約は、こういう企業の目的を前提として構成されていると言っても過言ではないでしょう。野球協約を全面的に見直すなら、出資する企業の側もその意味を考え直さなくてはいけません。根本的なところはそのままで、条文のみを見直そうというなら、小手先の改革に終わってしまうことは必定です。じゃあ上の1~3の他に、どういう意味があるのでしょうか?そもそも既存球団に対する主たる出資企業の目的が1~3に凝縮されているので、ここでは大阪市民球団に出資する意味は何か?という観点で考えてみます。

4.企業メセナとしてのスポーツ支援
企業メセナとは、一般に企業が芸術や文化を支援することを指しているようです。また、その目的も「企業のイメージ戦略」的なものから「芸術や文化を振興し利益を社会全体に還元する」ものへと変質しているようです。昨年、「プロ野球は公共的文化財」だと言って球団統合に反対したファンや選手に対し、経営難を理由に撤退・統合するのは当然とばかりに球団統合を強行したオーナーやNPBの幹部たちは、村上ファンドや楽天の資本力を背景にした経営スタイルを見せつけられると今度は手のひらを返したかのように「プロ野球は公共的文化財」と主張しはじめています。1社で支えきれないなら複数企業で支え、利益がでたら社会全体、特に地域や応援してくれたファンに還元する。やはりそういう方向性を目指すべきではないでしょうか。もちろん、全球団が足並みを揃える必要もありません。既に利益を出している球団や赤字は本業の収益でいくらでも挽回できるという企業だってあるでしょう。しかし、それができない球団は犠牲になるというシステムではなく、多様な経営スタイルを受け入れ、全ての球団が生き残れるシステムを目指すべきだと思います。またここで、スポーツ支援としたのは、プロ野球に限らず、複数のスポーツにまたがって少額の支援を行い、野球だけでない、スポーツという範疇を文化ととらえることが、より望ましいという意味合いです。種別の異なるスポーツなら二重支配でも三重支配でも許されるでしょうし。

5.出資企業の一般社員に対する士気高揚と一体感の醸成
これは既存球団にも当てはまるんでしょうけどコストに換算するのが難しい項目であり、費用対効果を問われると無視されてしまいがちです。しかし、複数企業の出資なら出資額も抑えられ、一方で我社が出資している球団という価値観は1の球団名に企業名がついている時よりは落ちるもののそれなりに存在し、費用対効果は低いところでうまくバランスするのではないでしょうか。

6.複数の出資企業を仮想グループと見立てた顧客の囲い込み
上記の1~3のうち、3の本業とのシナジー効果については否定するつもりはありません。しかし、プロ野球という一つの軸よりも、多様な業界の企業間で連携し、プロ野球を媒体として多軸のサービスを提供することで顧客を囲い込むという戦略の方がより多数の顧客を取り込めるのではないでしょうか。

大阪市民球団の場合、今のところは単独で過半数を超えない複数企業の出資という考え方(大阪市民球団のガバナンス)なので、球団名に企業名をつけるということはない(出資企業が交代でつけるという考え方もありますが^^;)とはいえ、1の広告宣伝的な効果は不要ということではありません。そこでアイデア(止まりですが^^;)として、選手単位や本拠地の試合単位でスポンサーとなってもらい広告宣伝効果を得ようということを考えてみました。
まとめとして、複数企業の出資というスタイルで1~3をメインと考えると企業にとって出資のメリットを見いだしにくく、4~6をメインと考えると、単独出資の場合より少額の出資となることとあわせて出資をしようという動機付けになるのではないかと思います。

※なお、大阪市民球団(夢球団)の活動に関する公式HP(夢球団設立連絡会)はこちらになります。

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オーナー会議の続編:楽天問題の今後

「統治能力をなくしたオーナー会議」の続編として、改めて楽天によるTBSに対する経営統合の提案について考えてみます。楽天としてはTBSとの経営統合に成功すれば、本業の「ネット」と「放送」の融合を目指すというのが目的です。先日のオーナー会議の席で、三木谷オーナーは、「楽天と楽天球団は別法人。横浜に影響を及ぼすことはない。なぜ楽天だけを問題にするのか」と発言していました。本業と球団経営は別物という意味合いなんでしょうけど、楽天の中で楽天球団は中核事業の一つですから、当然、TBSを通じた放送で楽天球団を積極的に取り上げたいという要望が出てくるはずです。その時、そもそもTBSの保有している横浜より露出度を高めるのはダメ、といったTBS・横浜側と「利害関係※野球協約第183条のただし書きに登場する用語」が衝突する可能性もあります。単に八百長とか不公正なトレードのみが懸案事項ということではないんですね。もちろん、楽天としては、TBSの株取得が野球協約違反となることは百も承知のことだったのでしょう。だから、横浜ベイスターズをUSENに売却することで(USEN側とのみ)話をつけ、二重保有の状態を解消するというシナリオを描き、球界の院政気取りの渡邊恒雄氏に事前に相談していたんですね。しかし、おそらくは三木谷オーナーの予想を超えるTBSの拒否反応で、経営統合も横浜売却も否定されてしまい、窮地に陥っているというのが今の状況なんでしょう。三木谷オーナーは、また、オーナー会議で、野球協約第183条の例外規定が適用されているフジテレビ→ヤクルト(20%)とフジの子会社ニッポン放送→横浜(30.8%)の球団株保有と役員派遣が認められているのになぜ楽天がダメなのか、異議を唱えています。フジテレビとニッポン放送が野球協約違反かどうかの論点は、両社が野球協約第183条の「事実上支配権を有するとみなされる株主」に当たるかどうかという点です。出資比率は両社とも1/3未満ですから重要事項の拒否権もなく、役員を派遣しているといっても多数ではないでしょう。したがって「経営に関与している」とは言えますが、「事実上支配権を有する」とは言えないでしょう。だからフジテレビとニッポン放送の件は野球協約に適合していると認められてきたわけです。それが先日のオーナー会議では、「コミッショナーが文書で善処を要望する」というワケのわからない処置が施されることになりました。しかも、この処置は野球協約第186条によるコミッショナーの指令ではなく、何の強制力もないとのこと。。。明確に協約違反の楽天問題は先送りして、協約適合と判断された過去の事例に形式的な文書を出す、もう迷走以外の何ものでもありません。
さて、そのオーナー会議の議長を務めた宮内オーナーの発言。
「野球が親会社の経営戦略に波及していいのか。最終的に子会社のことで親会社がM&Aをやめるのか、という選択になることも考えられる。」
これはつまり、楽天が野球協約違反と認定された場合は、コミッショナーにより、「楽天が楽天イーグルスを売却する」「TBSが横浜ベイスターズを売却する」「楽天イーグルスと横浜ベイスターズを統合させる」「楽天がTBS株を全株売却する」のいずれかを速やかに実施しなさいという指令を出すことになるが、それは(社会常識として?)おかしいだろうという発言です。NPBに加盟している球団は野球協約を守るということが前提であり、その最高意志決定機関であるオーナー会議の議長が「協約違反の行為を責めるのはおかしい」と言っているわけで、普通に考えれば「あんた(宮内オーナー)の言ってることがおかしい」と言われても仕方がありません。宮内オーナーは、「楽天のTBS株取得が野球協約違反になるとすれば、それは野球協約の方がおかしいと考えるべきだから、楽天に対する処分は保留として野球協約第183条の見直しを早急に行いましょう。」と言うべきだったんですね。上の宮内オーナーの発言そのものは、今回の問題の本質的な部分として、もっと議論すべきことだったんでしょうけど、昨年の球団統合にしろ、今回の議長裁きにしろ、この人にはセンスがない!だからバッシングされるんですね。
ここでは、宮内発言をもう少し掘り下げてみます。まず「野球が親会社の経営戦略に波及していいのか。」そういう考えを持っているんなら、親会社のリストラに巻き込まれた大阪近鉄バファローズはどうなのか?オリックスにしろ、楽天にしろ、球団経営は親会社の経営戦略の一つでしょう。経営戦略を考える時、プロ野球の球団を保有しているというのは与条件として意識しているはずであり、無関係だと言うんなら経営者として失格です。次に「最終的に子会社のことで親会社がM&Aをやめるのか。」こちらが、より言いたかったことなんでしょうね。何しろオリックスはM&Aで成長している企業ですから。しかし、オリックスが阪神電車の株を買い占めるのと京阪電鉄の株を買い占めるのとでは、全く意味が異なってきます。オリックスが村上ファンドから阪神電鉄株の譲渡を受けたら、マスコミは一斉に「オリックス・阪神の統合か?」と騒ぎ立てるでしょう。阪神球団の保有が本意でないならば、やはり「子会社のオリックス球団のことで親会社のオリックスが阪神電鉄のM&Aを行わない。」という選択をせざるを得ないでしょう。
宮内発言を取り入れるべく野球協約を改正するんなら、資本と球団経営を分離させる方向で考えるべきではないでしょうか。大阪市民球団では出資者を小口分散させるという発想なので、そのスキームを考える時、どうしても資本と球団経営の関係がネックになってきます。それには、まず「企業がプロ野球に出資する意味は何か?」というあたりから考えていく必要がありそうです。
前回の「統治能力をなくしたオーナー会議」でのコメントは、くしくもオーナー会議における讀賣の滝鼻オーナーの発言に最も近かったようです。ただ、それは「ルールとして野球協約は守るべし」というコンプライアンスの観点で一致したというだけであり、野球協約を含め今後の球界をどうすべきかという観点で讀賣サイドの考えと一致しているとは思いません。
大阪市民球団の設立によって球界に新風を吹き込み、企業サイドと野球ファンである市民、そして主役の選手たちが共存共栄できる球界改革を模索していきたいと思います。とえらそうなことを言いながらあまりに微力ですが(^^;

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2005年11月 5日 (土)

統治能力をなくしたオーナー会議

野球協約第183条に明確に違反している楽天に対する処置がオーナー会議で先送りされました。先送りを申し入れたのは議長を務めるオリックス宮内オーナー。オリックス自身も村上ファンドを通じた阪神タイガースへの二重保有を指摘されているため、楽天を「黒」と決めつけると、オリックスも「黒っぽい灰色ではないか?」と責められるのを嫌ったのでしょうか?それとも先送りして時間稼ぎをしている間に球界再編をもくろんでいるのでしょうか?

●野球協約第183条(他球団の株式保有)
 球団、オーナー、球団の株式の過半数を有する株主、または過半数に達していなくても、事実上支配権を有するとみなされる株主、球団の役職員および監督、コーチ、選手は直接間接を問わず他の球団の株式、または他の球団の支配権を有するとみなされる会社の株式を所有することはできない。
 ただし、オーナー、球団の株式の過半数を有する株主、または過半数に達していなくても、事実上支配権を有するとみなされる株主による他の球団の間接所有については、他の球団との利害関係が客観的に認められないと実行委員会およびオーナー会議が判断した場合は、この限りではない。また、コミッショナー事務局および両連盟の役職員は、いずれの球団の株式も所有することはできない。

楽天は「球団の株式の過半数を有する株主」なので、「他の球団の支配権を有するとみなされる会社」であるTBSの「株式を所有することはできない。」・・・あまりにも明確な野球協約違反です。TBSじゃなくてフジテレビなら問題なしとなったんでしょう。フジテレビはヤクルトの株を持っているとはいえ20%ですから。楽天がTBSを支配するか否か、経営統合をするか否かは野球協約上は関係ありません。楽天がTBSの株式を所有した時点で違反行為になっているわけです。楽天は「ただし。。。」の部分を適用できないかと主張していますが、この場合の論点は、「他の球団との利害関係が客観的に認められないと実行委員会およびオーナー会議が判断した」か否か。実行委員会では11球団が「黒」といったわけですから、もうこの時点で「ただし。。。」は適用できません。「実行委員会およびオーナー会議」の両方で理解を得られてはじめて「ただし。。。」が適用されるわけですから。またオーナー会議においても「黒」が多数意見だったのですから、野球協約第186条によってコミッショナーの指令が下されるというのがルールに沿った処置だったわけです。現行の野球協約がいい悪いは別の議論であって、宮内オーナーの先送りの申し入れはコミッショナーに対する越権行為。コミッショナーの方はやるべき職務を放棄した。これが今回のオーナー会議の実態ですね。あきれるばかりです。球団統合はごり押しし、都合の悪いことは先送り。宮内オーナーに議長を務める資格はありません。コミッショナーの方はいわずもがな。。。存在自体が悪です。

●野球協約第186条(違反または不履行)
株式所有または金銭上の利害関係の禁止条項に違反した時は、コミッショナーにより違反事実の解消を指令され、かつ情状により適当な制裁が科される。監督、コーチ、選手はコミッショナーの裁決を履行するまで、すべての野球活動が停止される。

オリックスの場合は、「球団の株式の過半数を有する株主」であり、村上ファンドに出資しているわけですから、論点は「村上ファンドが阪神球団の支配権を有するとみなされる会社」であるか否か。こちらは微妙です。オリックスはファンドの運用先まで関知していないと主張していますが、問題視されているのは「ファンド」への投資ではなく、MACアセットマネジメントの「株式を45%保有」している点。オリックスの弁明は議論のすり替えです。村上ファンドの方は「支配」が目的ではなく「投資」が目的といっていますが、既に阪神電鉄の筆頭株主として球団株上場を提案しているわけですから、「支配権(もどき?)を行使しつつ投資効果を上げよう」という行動をとっているとみれるでしょう。したがって、村上ファンドの阪神電鉄に対する持ち株比率が過半数を超えた時点でオリックスは「黒」。
現在は「黒っぽい灰色」といったところでしょう。それとオリックスは球団株上場に賛成しています。これが球界再編をもくろんでいるという状況証拠。。。かな!?

今回の二重保有についての野球協約上の論点は「他の球団との利害関係が客観的に認められない」と「他の球団の支配権を有するとみなされる会社」の二つ。これについて当事者及び各球団の意見を聞いた上でコミッショナーが断を下す。それができないならオーナー会議なんて開く意味はなかったわけです。

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2005年11月 4日 (金)

球団数増加に対する5つの視点

NPBへの新規参入により球団数を増加するということを考える場合、プレーオフ制度から見た新規参入待望論でも考察したように、4球団増の16球団体制とするのが一つの理想型と言えるでしょう。昨年の球界再編は10球団または8球団の1リーグ制移行が取り上げられ(今年もくすぶってはいますが^^;)、球団側は賛成多数、ファンと選手会は反対と立場により意見が二分されました。では、球団数増加の場合、どういう対立軸が出てくるのでしょうか?

1.ファンの視点
東北楽天の誕生で仙台の野球ファンはおおいに盛り上がっています。しかし、東北地方以外の野球ファンにはあまり関心がないかもしれません。球団数増加は、増加した球団のファンとなりうる人にとっては大きなプラス、それ以外は大きな影響なしといったところでしょうか。それと球団拡大時は目新しさを楽しむこともできますね。まぁこれは最初だけですが。。。

2.選手の視点
プロを目指す若者にとって、球団数が増えることは朗報でしょう。まぁ一部の有力選手にとっては希望球団に行ける確率が低くなるとも言えますが。あとは全体として一軍の試合の出場機会も増えることになります。戦力が分散すると大記録が生まれやすくなるとも言われますね。また有力選手を48人とすると、12球団なら平均4人、16球団なら平均3人となり、有力選手への年俸の配分を多めにすることも可能となります(球団の経営状況に変化がなければという条件付きですが)。球団拡大時にエキスパンションドラフトをやるとなると。。。これは嫌われるかもしれませんね。包括すれば、どちらかといえばプラスといった当りでしょうか。

3.球団経営の視点(既存球団)
既存球団にとっては、大リーグに有力選手をとられ続けている上に、球団拡大時にエキスパンションドラフトで選手を引き抜かれるのは辛いところです。有力選手への年俸負担減というより、球団の魅力低下による収入減の方が大きいというのが現状でしょうか。対戦相手として新規参入球団が出てくるというのは、話題つくりに成功すればプラス、経営は讀賣戦のTV放映権頼みというセリーグ球団にとっては交流戦と同様、「そりゃ困る」かな。まぁいつまでも讀賣戦頼みのビジネスモデルが通用しないということは覚悟しているんでしょうけど。

4.球団経営の視点(新規参入球団:地方都市)
プロ野球空白地帯の地方都市に新規参入して経営していけるのか。その答えは東北楽天の初年度からの黒字経営で光明が差してきたとも言えますが、仙台より都市の規模が小さくなるほど経営は厳しくなります。新規参入を目指している松山や金沢ではどうでしょうか?Jリーグのクラブは地方都市でも十分に成立していますが、一般に週2日で平日+土日のJリーグと週6日で毎週、平日に4日も試合をするプロ野球は同列に扱えません。平日の仕事帰りをターゲットにした集客能力について、プロ野球の方がより問われることになります。仙台よりも小さな規模の地方都市でプロ野球の興行を成功させるには平日のホームゲームは大都市の球場と併用にするといったフランチャイズ政策なんかも考える必要がありそうです。

5.球団経営の視点(新規参入球団:大都市)
京都などの例外もありますが、大都市では概ね既存球団が進出しています。大阪の場合、大阪のみを本拠地とする球団は消滅してしまったので空白地帯と言えなくもありませんが、関西の場合は阪神タイガースという存在感の極めて大きな球団があります。大都市への新規参入は市場のパイは大きいが、地方の空白地帯への新規参入のように市場を占有することが難しいという点で、4の場合と全く異なる視点で経営ビジョンを立てる必要がありますね。

こうしてみると、対立軸というより、創意工夫で乗り越えられる(かな^^;)課題が横たわっているというくらいの感じに思えます。新潟アルビレックスの成功、東北楽天ゴールデンイーグルスの初年度からの黒字経営。ダメだと思ってやらなければ何もできません。何でダメなのか、ということを考えることも大事ですが、それよりも、どうすればできるのかという前向きな発想で考えていきたいと思います。

ところで新規参入を目指すには、単独ではなく複数で共同歩調をとることが望まれます。松山、金沢、大阪での新規参入を共同で目指していこうという趣旨の下記フォーラムに期待したいと思います。

「第二回野球好きフォーラム」
~ 私達の町のプロ野球球団の実現に向けて ~

2005年11月19日(土)松山市にて

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プレーオフ制度から見た新規参入待望論

今年は千葉ロッテマリーンズの年でした。交流戦の優勝にはじまり、プレーオフ、日本シリーズ、そして11/10からはじまるアジアシリーズへも進出します。ところで千葉ロッテはシーズンの順位が2位でした。結局、2年連続でパリーグの2位チームが日本シリーズを制したわけですね。プレーオフについては、もちろんメリットもありますが、一方であれこれと注文がついてます。その問題点は次の2点に集約できるでしょう。
・上位3チームが進出できるためシーズン中の試合の価値が低下する。
・パリーグのみの3球団による実施のため日程上の不均衡が生じる。
まず1点目。ポストシーズンの短期決戦に3/6、つまり全体の1/2が出場できるというのは、ファンとしてはありがたいかもしれませんが、今年の西武のようにシーズンで負け越したチームが日本一になる可能性があるという点が納得できません。しかし、プレーオフを実施しないと日本シリーズへ進めるのは1/6のため、何年もポストシーズンへ進めない球団が出てきます。パリーグの場合、昨年までの55年間で日本シリーズに出場したのは、前身のチームを含み、北海道日本ハム2回、大阪近鉄4回、千葉ロッテ4回(今年で5回目)、オリックス12回、福岡ダイエー13回、西武20回でした。セリーグの方は、讀賣の30回がダントツで、残りの5球団は3~6回の範囲です。ファンとしての最大の楽しみは勝者のみに与えられるシーズン優勝→ポストシーズンの間の興奮です。しかし、12球団中8球団のファンは、その興奮を10年に1回程度以下(55年間で6回以下)しか味わえなかったんですね。この数字に昔のパリーグのプレーオフはカウントしてませんが、当時のように前後期制としたり、6球団を東西に分けてのプレーオフとすると、2/6→1/3がポストシーズンに進めることになります。この場合、ポストシーズンへの出場権利は優勝チームに限られますので、シーズン中の試合の価値も担保されます。しかし、1/3というのもまだちょっと甘い(^^;。大リーグの場合、アリーグ西地区が4球団と最小でアリーグ全体だとワイルドカードも含め4/14→1/3.5がポストシーズンへ進める比率です。ナリーグは4/16→1/4。大リーグにならえというわけではありませんが、希少価値とファンの楽しみの両者を満足させるのはポストシーズンへの進出比率が1/4がベストではないかと思います。それには4球団増やしてセパ8球団とし東西に分ける。これしかありません。いや。。。これだと二宮清純氏がかねてより主張していた案そのものになってしまいますので、東西にはこだわらず球団の特徴に応じた分け方にするのもよいかと思います。例えばソフトバンク、楽天、オリックスにライブドアを新規参入させてパリーグのハリーグ(渡邉恒雄氏命名)とするとか。いずれにしろ、これならどのチームのファンも10年に1回以上は優勝の美酒とポストシーズンの興奮が味わえる可能性が高まるわけですし、NPBはこういう制度設計を目指すべきと考えます。

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2005年11月 3日 (木)

大阪市民球団のガバナンス

47thさんのふぉーりん・あとにーの憂鬱「コントロールとキャッシュ・フローの分離雑考(イントロ)」、磯崎さんのisologue「タイガース上場(等)と多様なガバナンスの可能性(その2)」よりトラックバックを頂き、球団株上場に関連して株式公開(IPO)やガバナンスについて非常にわかりやすい解説(素人には難しい用語なんかも多いですが^^;)をしていただきました。このblog(市民球団を考える)は、阪神タイガースの上場ではなく、大阪市民球団の設立が最大のテーマですので、両blogからお知恵を拝借しつつ、大阪市民球団のガバナンスについて考察してみたいと思います。

まず、大阪市民球団を未公開企業とし、出資企業を4社とする場合。
企業の出資比率(普通株式)を20%×3社+30%(球団オーナーを出す会社、以下、幹事企業)、市民出資が残りの10%、市民出資分は議決権を普通株式の5倍に優先配分する種類株式とすると、企業の議決権は20/140×100=14.3%×3社、幹事企業の議決権は30/140=21.4%、市民出資者の議決権は50/140×100=35.7%となります。
目標出資額を100億円と設定すると、企業の出資額は20億円×3社、幹事企業で30億円、市民出資分で10億円。市民出資分については、1口10,000円で1人最高100口まで購入可とすれば、10,000円×10万人or10万円×1万人or100万円×1,000人といったイメージで個人出資者を集めればよいということになります。
市民出資者の議決権については、個別にカウントしていく方式(以下、個別方式)と一体としてカウントしていく方式(以下、一体方式)がありそうです・・・この辺は、法律に基づいてのコメントではなく、素人的発想ですが(^^;
ここで、個別方式では球団株主=市民出資者、一体方式では球団株主=ファンクラブのホールディング名義と仮定してみます。この場合、意見が二分される問題(企業が2対2、市民出資者が49対51)で過半数を確保するためのキャスティングボードを握るのは、個別方式では幹事会社、一体方式では市民出資者(の多数決で勝った側)ということになります。また野球協約第28条の「球団は発行済み株式数、および株主すべての名称、住所、所有株式の割合をコミッショナーに届けなければならない」、「株主に変更があった場合はその都度届け出る」に照らし合わせると、個別方式は適用が難しく、一体方式は市民出資者の情報が届け出の対象外となるので適用可能と言えそうです。もっとも、この条項自体、村上ファンドの影響を受けて改正(改悪?)される可能性大ですが。。。これらを考えると、一体方式の方が実現性が高く、また市民の声(但し多数決の論理なので少数意見は無視されがち)が経営に反映されやすいということでしょうか。
ただ市民出資者といっても、基本は野球ファンであり、経営とか人事の細かいところまで関与する(議決権を有する)ことを望むのか?と考えると、ん~と考えてしまいます。

>47thさん
>公開会社では、「無議決権投資家」として想定されるのは、分散した株主層で、情報収集・意思決定のコストを考えると会社経営に関心を持たない方が合理的という「集合行為問題」を抱えた人たちになります。

球団職員になるような場合は別として、市民出資者として経営に参画するレベルとしては、重要な決定事項には議決権を有し、一般的な事項では意見を言う機会を与えられるといった当りが妥当な線ではないでしょうか。そうすると、種類株式における議決権の設定は、「重要な事項では5倍、一般事項ではゼロ」となりそうです(こんなのありかな???)。

>磯崎さん
>前述の私のタイガース公開に向けた資本政策案は、むしろファンの発言力は高くなるし、それを全体のガバナンスの構造に前向きに反映させよう、ということで、発想が全く逆のものです。

私は「ファンの発言力」を経営に取り込むのには賛成なんですが、必要以上に高い比率で経営に反映させることはどうかな?と思っています。「ファンの望み」と「経営のあるべき姿」は時として反目することがありますし、「ファンの発言力」といっても出資者に限定されるわけですから。重要なことは、球団統合のような重大事項をファンの声を全く無視して、ファンに説明することもなく強行するという愚劣な行為は二度とおこしてはならない、ということです。横浜FCのファンや大阪近鉄バファローズ&オリックスブルーウェーブのファンはそのことが身にしみているわけですね。あとは球団側がファンのニーズを汲み取った経営(今年の千葉ロッテのように)をしてもらえばいいわけで、その圧力として市民出資者がお目付役的存在(この微妙な立場を種類株式の設定により味付けするのが腕の見せ所^^;)になれればよいのではと思います。

次に大阪市民球団を上場する場合。
100億円程度の出資金を集めるとして、磯崎さんの阪神タイガース上場案(時価総額410億円)の1/4モデルで考えると、普通株式は20万円×5万株=100億円、市民出資者(ファンクラブ)は種類株式で20万円×2,500株=1万円×5万人=5億円。種類株式の議決権を10倍とすると、市民出資者(ファンクラブ)の議決権が2.5万/7.5万×100=33.3%になります。問題は、普通株式5万株のうち、出資企業がどの程度引き受けるかということになります。主たる出資企業を安定株主と位置づけ、3社×3,000株+4,000株(幹事会社)とすると、市民出資者とあわせた議決権が3.8万/7.5万=50.7%となり、過半数を制しての敵対的買収の可能性がなくなります。ただ筆頭株主が4,000株(出資金8億円)で、普通株式の流動分が5万-1.3万=3.7万株という状況は不安定な気もします。安定株主の出資比率を超える株主の出現を防ぐには、例えば3社×9,000株+1.4万株(幹事会社)とすればよいですが、流動分が9,000株しか残らないため、上場する意味が見いだせません(と言えるかな?)。
上場する目的、意味はなんや?というのをもう少し整理しないと、大阪市民球団を上場するメリットがわからないというのが現状です。

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